Jリーグが進める「秋春制」へのシーズン移行は大詰めを迎えている。開幕を現行の2月から8月にシーズンを変更し、最短で2026年夏にスタートさせるというもの。28日の理事会後の会見で樋口順也フットボール本部長の説明を聞き、選手ファーストの視点には共感した。
これまでシーズン移行について、筆者はヨーロッパ、ACLといった国際カレンダーに合わせる利点ばかり考えていた。だが、そこには「Jリーグを世界と戦う舞台に変えよう」という考えが根っこにあり、選手のコンディションにフォーカスしたものだと気づかされた。目から鱗(うろこ)が落ちるとは、このことだろう。
■夏場の酷暑に「耐える」
同本部長の言葉を借りると、Jリーグはこれまで30年間、日本のシーズンは「谷型カーブ」で過ごすものだった。
谷型とは何か? 春に始まり、選手たちは試合を重ねながらコンディションを上げて行くはずだが、3~4カ月すると季節は夏場を迎える。近年は特に地球温暖化の視点から、酷暑が社会問題となる中、コンデションは必然的に下がっていく。「(リーグが)始まってから、落ちていくことに耐える、耐えるというシーズンを過ごしていくことになる」のだ。そして夏場の底辺から秋以降、グッとコンディションを上げていく曲線を「谷型」と例える。
それに反して秋春制となれば、8月半ばに開幕し、そこから気温が下がる秋・冬に向けてコンディションが上がっていく。これが「山型」である。選手たちの声をもとに、Jリーグ側はシーズン中の曲線を変えることの意義をこう説く。
「アスリートとして、自分がどれだけの高みを目指せるかという鍛錬を重ね、どこまで到達できるか? というところを目指していく山型のカーブ。これを何年も過ごすことによって、アスリートとして到達できるところが大きく変わるんじゃないか、という意見をいただいた」
さらに選手の意見だけでなく、運動生理学の専門家からも「カーブを変えることで、期待しているようなことが実現できるのではないか」との「お墨付き」をもらえたという。
それゆえ「Jリーグでプレーすると世界基準のプレーができるとか、Jリーグでプレーすると日本代表として戦えるだとか。Jリーグでプレーするとアスリートとして成長できるとか。そんなプラットフォームにJリーグ自体を変えていくことが非常に大事なのではないか」と言葉に力がこもった。
素晴らしいプレー、ハイクオリティな試合を見せたい、という選手の思いに沿った環境づくり。それが国際大会で結果を出すこと、Jリーグから代表選手を増やしていくこと、さらに移籍金の収益の拡大や試合放映、スポンサーなどサッカーを取り巻く環境の向上、ひいてはサポーターへの価値提供や地域への貢献にもつながっていくと目論んでいる。
■ウインターブレイクあり
その秋春制のシーズン案は、8月半ばに開幕して12月第3週でいったん終了。欧州のようにウインターブレークを設けて降雪期間を回避し、再び2月の中旬から後半戦を始めるというものだ。また新加入選手については、高校、大学の卒業シーズンを踏まえ、これまで通り冬のウインドー(1~2月の移籍期間)を使う。
年度またぎとなるスタジアム確保という課題についても、各クラブに本拠地を確保できる時期の試合数を確認。シミュレーションを施した上で、クリアできる見込みとなっている。
野々村芳和チェアマンは「Jリーグが抱える問題を発見できた。バラバラだったところが一つの方向性を見いだすことができている。Jリーグがシーズンを変えるよりも大きな役割、Jリーグの社会的役割があり、社会が足並みをそろえつつある。すごく実りあるいい時間になっている」と、シーズン移行に伴う議論がさまざまな副産物を生んでいるとした。
Jリーグが動けば、その下のJFL、地域リーグのカレンダーも当然変わる。さらに広がりはあるだろう。そこで旧態依然とした学校スポーツを見直すきっかけになれば、と期待している。昭和から続く従来の制度ありきでなく、もっと時代の流れや環境を考慮し、選手に寄り添ったものへ。中でも8月の炎天下で行われている高校生の各種スポーツ大会については、選手の健康面に配慮した方式になってほしいと願う。
「秋春制」へのシーズン移行は12月14日の実行委員会でJ1、J2、J3の全60クラブの賛否を問い、同19日の理事会で最終決定する。【佐藤隆志】






