J2ギラヴァンツ北九州の小林伸二監督兼スポーツダイレクター(60)が「超攻撃サッカー」で、8月29日のジェフユナイテッド市原・千葉戦(ミクスタ)でクラブ新記録の9連勝を目指す。

8連勝を達成した8月23日の東京ヴェルディ戦。鳴り物応援がないスタジアムの4階記者席まで届く大声で選手を鼓舞して、2-1の逆転勝利に導いた。過去に大分トリニータや清水エスパルスなど4クラブをJ1昇格に導いた“昇格請負人”が熱い。8月24日に還暦を迎えてもなお、サッカーへの情熱は高まるばかりだ。

東京Vの印象については「本当にうまいチームで主導権を握られると難しかった」と、警戒していた。だが「守備に回ると負けると思った」と、個人技に優れる相手に対してチームスタイルの「攻めの姿勢」を貫いた。

前半に、オウンゴールを献上した。だがそこから、攻撃は最大の防御とばかりに猛攻を見せた。「積極的に前からプレスをかけて、主導権を握るサッカーができていた」と序盤から狙いはブレず、ボールホルダーを徹底してつぶすことで、パスをスペースでつなぐ相手を自由にさせなかった。

その走り、競り負けないパワーの源の1つが去年から続ける「ボールを使い、いかにプレー強度を上げるか」にある。「5、10、15分までは前から(プレスに)行けるけど、後は落とすというサッカーじゃなくてとにかく上げる」という、試合全体を通して高強度を保ち相手を粉砕している。

「立ち上がり15分は(プレー強度が)すごく高いから疲れる。だから相手もついてこれないところを認識しながら、技術と強度を確認しながら進めている」。選手交代枠も有効に利用してきた。23日現在、J2最多の25得点。ほぼ主導権を握るため、失点も11と2番目に少ない。

就任1年目の昨季、J3で優勝に導いた。だが、J2戦線に挑むにあたり「レベルも上がっているし厳しいリーグ。J3から上がって全部が強く見える」と、苦戦を覚悟していた。

その上、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で4月4日を最後に活動休止した。さらに、5月19日から少人数による複数グループ分けで再開したが、その後、北九州市の感染者再急増で一時“少人数トレ”に逆戻りすることもあった。そんな“逆境”での6月27日のJ2再開で「早いなというのが正直な話」と困惑もしていた。

案の定、V・ファーレン長崎とのリーグ再開初戦に1-2で敗れて開幕2連敗と波に乗れなかった。だが今では、首位長崎を率いる手倉森誠監督(52)も「どのチームも手を焼くサッカーをしている」という快進撃を見せている。試合を重ねるごとに、経験豊かでJ2の戦いを熟知する「小林イズム」が浸透している。【菊川光一】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市博多区生まれ。福岡大大濠高-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部で主にJリーグや高校野球などを担当、プロ野球などのカメラマンも兼務する「二刀流記者」。スポーツ歴は野球、陸上・中長距離。