<高校サッカー:久御山1-1(PK4-3)関大一>◇準々決勝◇5日◇ニッパ球

 久御山(京都)が、関大一(大阪)とのPK戦を制し、チーム初の4強入りを果たした。

 崩れ落ちる紫紺イレブンをバックに、歓喜の白い輪が出来上がる。1-1で突入したPK戦。久御山5人目キッカー・FW安川のシュートが右隅に突き刺さった。関大一MF梅鉢のPKを防いだGK絹傘は、飛び跳ねてガッツポーズ。駆け寄る仲間と喜びを爆発させた。中学3年時に空手全国大会で3位に輝いた絹傘は「相手は関係なかった。本当にうれしい」と笑った。

 「京都のバルサ」がミラクル快進撃だ。バルセロナに心酔する松本監督の下、攻撃サッカーを貫く。この日も細かいパスワークで密集地帯を打破し、トリッキーなプレーで「近畿ダービー」の主導権を握った。自ら志願してPKを決めたMF二上は「決められる気がした」と言う。チーム初、さらに京都勢では山城が準優勝した1992年(平4)度大会以来となる4強に進出。指揮官は「PK戦ではみんなで念力を送りましたよ」と胸を撫で下ろした。

 今大会はどん底からスタートした。開会式リハーサルで人気オネエ芸人楽しんごの、胸の前で両手でハートマークを作る“ラブ注入”を試みるも、関係者から制された。だがラテンのチームは懲りなかった。本番の入場行進では両手を前後に振るのではなく、横にパタパタ…。前回出場の3大会前もパフォーマンスで物議を醸した前例があるだけに、松本監督の怒りが頂点に達した。

 初戦の中京大中京戦を控えたその夜だ。指揮官はミーティングで「もうええ。お前ら負けてしまえ」と淡々と言い残した。残された選手は涙ながらに猛省し「勝とう」と誓い合った。眠ることなく朝を迎えた松本監督も「このままじゃ恥ずかしくて京都に帰れん。絶対に勝つぞ」と前言撤回し、チームは一致団結した。実力で国立に戻った久御山が、サッカーで観衆を魅了する。【佐藤貴洋】