2大会ぶり2度目の金メダルを狙うC組1位のなでしこジャパン(FIFAランク6位)が準決勝でA組1位の韓国(同15位)を2-1で破り、4大会連続の決勝進出を決めた。前半5分にFW菅沢優衣香(27=浦和)が先制点。同点に追いつかれたが、後半41分に相手オウンゴールで勝ち越した。90年北京大会からの全8大会メダルが確定し、31日の決勝はB組1位の中国(同17位)と戦う。

決勝行きを告げる笛を聞くと、蒸し暑いピッチ上でなでしこたちが次々と抱き合った。1-1の後半41分、DF清水のクロスをFW菅沢が頭で折り返すと、クリアを試みた韓国DFの頭に当たってオウンゴール。思わぬ勝ち越しの後、攻め込まれた。DF鮫島は「(同点で)120分やっていたら向こうが圧倒的優位。90分で終わらせて、安心した」。必死に耐え抜いた。

宿敵の圧力を高倉監督も感じていた。3日前の準々決勝・北朝鮮戦から先発を3人変更。その1人だった菅沢が前半5分、相手DFの背後に抜け出して右足で先制ゴール。徐々に中盤を支配され始めると、指揮官は後半10分に先発の機会を与えた24歳のMF中里と、21歳のDF国武をそろって代えた。「チーム自体の成長と、彼女たち自身の成長のためにプレーを引っ張った。よく戦っていたが、修正を加えた方が良かった」。後半23分には警戒していたINAC神戸MFイ・ミナの同点ゴールで肝を冷やしたものの、最後は勝ちきった。

澤穂希さんら11年ワールドカップ(W杯)優勝メンバーが数多く抜け、新しいなでしこには生みの苦しみがつきまとう。高倉監督は「目先の勝利だけで組み立てると、チームの膨らみはなくなる」。北朝鮮戦では、先制点をアシストしたFW田中を前半のみで交代させた。試合後には「FWで(ボールの)収まりが悪かった」と説明した。

一方、田中の心中にはもやもやとした思いが募った。「何で? と思ったので、聞きに行きました」。直接、指揮官を訪ねて、途中交代に至った経緯を確認した。詳細こそ明かさなかったが「言われたことを次に生かさないといけない。受け止めて、やるしかない」。この日の出番はなかったが、試合と同時進行で19年W杯フランス大会に向けたチーム作りは進んでいる。

経験豊富な鮫島は「常に危機感MAXです」とライバル国の力を分析する。それでも、育てながら勝つ。8年ぶりの頂点には、大きな価値がある。【松本航】