日本代表の西野朗新監督(63)が“脱ハリル”で約2カ月後に迫ったW杯(ワールドカップ)ロシア大会へと向かう。10日、東京・JFAハウスで行われた年代別代表の指導者が集まるコーチ会議に出席。その後に取材対応し、就任後の第一声を発した。縦に速い攻撃、デュエル(球際の攻防)など前任者が求めたものより、日本人の特性をより生かしたスタイルで短期間の勝負に出る。12日の日本協会の理事会で就任が正式承認され、その後、都内で就任会見が行われる。

 西野新監督はないものねだりはしない。ガンバ大阪黄金時代に掲げた「超攻撃」など華麗なイメージがあるが、W杯まで約2カ月。求められる結果を出すために腹をくくっていた。「マイアミの奇跡」も守備的な、割り切った超現実路線だった。

 就任会見前の第一声で、ヒントを明かした。「ヴァイッド(ハリルホジッチ監督)のスタイル、求めた強さ、速さ、推進力。確かに必要な部分は、これからも求めていかなければいけないが、ベースにあるもの、その強さを積み上げていくことがさらに大事。ないものを求めるより、あるものに対して、積み上げてきたものに対して、良くしていく。そこで勝負していく方が、早いかもしれない」。

 前任者の取り組みは尊重しつつ、縦に速い攻撃、さらにデュエルなど、元来日本人が得意としない部分については、ある程度割り切る。代わりに、日本人の強みを最大限生かす。

 J1リーグ最多270勝監督は「ずっと積み上げてきた日本サッカー界の、日本サッカーというものがある。技術的に世界で通用する部分もたくさんある。規律を持ち、組織的に戦えるチーム、そういう強みはある」と分析。前日9日の会見では田嶋会長が日本の目指すべき方向を個人の意見だと断った上で「しっかり、ボールをつないでいく」とも発信した。“脱ハリル”で、W杯に臨んで結果を求めることになる。となれば注目のメンバー選考も変わってくる可能性がある。

 明日12日の理事会の承認を待っての正式就任となるが、心は既にロシアへ一直線。「受けさせてもらったその時から、仕事は始まっている。覚悟を持って、入っている」。今日11日のJリーグ視察は見送るが、正式承認を経て週末には視察に出る。7日に63歳になったとは思えないダンディーさは健在。誕生日おめでとうございますの声に「まずそれを言って下さい」とニヤリ。去り際のおねだりは忘れなかった。【八反誠】