<国際親善試合:日本0-2メキシコ>◇17日(日本時間18日)◇オーストリア・グラーツ

日刊スポーツのサッカー担当記者が独自の視点で掘り下げる「Nikkan eye」は「采配」から、メキシコ戦を見る。日本代表は前半で多くのチャンスを作りながら、後半で変化したメキシコに対応できなかった。先を見据えるがゆえに勝ちにこだわりきれなかった日本と、勝利のために手を尽くしたメキシコ。両国の指揮官が振るったタクトは対照的だった。

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目の当たりにした“悲劇”と重なった。ロストフナドヌで見た18年ワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝トーナメント1回戦のベルギー戦は、1点を返されてから追いつかれるまで5分間。メキシコに2点を奪われた時間と同じだった。流れに乗ったかに見えたところから、一気に崩れていく感覚は、重なるものがあった。

首をかしげながらベンチに下がるMF鎌田の姿が、歯車が狂った後半を象徴した。後半開始からメキシコはボランチを2人に増やしたことで、前半の輝きは失われ、不完全燃焼に終わった。メキシコのマルティノ監督は2ボランチについて「通常はやらない」。それでも、前半ペースを握られた中、後半の45分間で主導権を奪うための手だった。

一方で日本は交代で入ったMF久保、南野ら攻撃陣も流れを変えられない。試合には流れがあり、我慢の時間帯は当然ある。しかし、ただじっと耐え忍ぶだけが我慢ではない。指揮官は「ただ守るだけで勝てるとは思わない」と話したが、主導権を奪われた段階で主体的な動きはなかった。前半で複数回のチャンスを逸したFW鈴木を使い続けたのは親心かもしれないが、後半開始の段階でFW浅野の投入もできた。後手に回る前に打てる手はあった。

来年は3月のW杯アジア2次予選に始まり、東京オリンピック(五輪)、W杯最終予選と続く。森保監督にとっては、コロナ禍での貴重な国際親善試合で戦力の上積みと見極めも重要だった。そんな背景はあるものの、代表は常に勝利が求められることも事実。W杯予選では、この日マルティノ監督が見せたような一発勝負で勝つための采配を、森保監督に期待したい。【岡崎悠利】