今月下旬からW杯カタール大会のアジア2次予選が再開予定ということもあり、日本代表・森保一監督(52)のことを考えてみた。指導者としてJリーグの実績は日本人トップ。財政面で苦しかった広島を4年で3度優勝させている。広島時代、選手やサポーターからの信頼も厚く、リーダーシップが評価された。18年のW杯ロシア大会後、日本代表の西野朗監督が日本協会からの続投オファーを断って退く際「後任は森保が適している」との推薦もあり、就任した。

人気面はどうか。私の目には、サポーター受けはあまりよくないように映る。W杯アジア2次予選は無傷で、就任以降の勝率も悪くない。だがネット上の書き込みや代表戦の盛り上がり具合などは、それほど評価されていない。主な否定理由は次の2点だ。

(1)言葉にインパクトがない

試合後のコメントは定型的で「また同じことを言ってる」と感じる人間は少なくない。メンバー発表や試合後の会見は、真面目で、相手を配慮する性格からか、とても慎重。外国人監督のような刺激的な発言は少なく、時には面白くないととられる。

(2)海外経験がない

森保体制に否定的な人の話をまとめると「選手のほとんどが欧州組。だが監督は選手としても指導者としても世界を経験していない。選手との信頼感は醸成されるのか」。就任して3年もたつが、この意見は根強い。

私は、日本代表は日本人監督が務めるのがベストだと思っている。日本人監督は結果だけでなく、日本サッカーの10年後も視野に入れながら競技に向き合っている。実際、森保監督は、年代別代表(男女)の練習にも時間が許される限り顔を出す。その年代監督の要望があれば、全選手の前で代表のコンセプトなどを説明。気になる選手には、各年代の監督の了承を得て直接アドバイス。率先して審判や指導者研修にも出席して意見を聞いたり、逆に意見することもある。これは、岡田武史、西野朗ら歴代日本人監督に共通して言えることだ。

一方、外国人監督はどうだったか。日本協会から、空いた時間に各年代のチェックを要請されると「契約にない」と断ったり、年俸とは別の手当を要求することがあった。プロの指導者としては当然かもしれないが、日本サッカーへの愛情は感じられない。日本協会幹部は「外国人監督で日本サッカーの将来を本気で考えてくれた監督は、オシムさんだけかな」と振り返った。

今後、東京五輪の結果、W杯最終予選の途中経過によっては、森保監督への風当たりが強くなることもあるだろう。幸いなことに日本協会の田嶋幸三会長が、同監督を信頼していることは大きい。いざとなった時は、防波堤になるはず。森保監督にはぜひ成功してもらいたい。10年後の日本代表のためにも。【盧載鎭】