日本が中国を破って連覇した7日のサッカー・アジア杯決勝後、中国人サポーターが日の丸を焼くなどして騒いだ行為について、英BBC放送、米CNNテレビは8日、“CHINESE RIOT(中国人が暴動)”として大きく報じた。しかし、8日付の中国各紙は、試合後の混乱について一切触れなかった。現地では日本人選手宿舎を約1000人の中国人サポーターが取り囲むなど、騒動は8日未明まで続いた。

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通常なら欧米のメディアは全く取り上げないサッカー・アジア杯を、トップ級ニュースとして報じた。BBCはトップニュースの1つとして「日本優勝後に中国人が暴動」のヘッドラインで「ファンらは5000人の警察官が並ぶスタジアムの外で日本国旗を焼き、罵声(ばせい)を浴びせた」「多くの中国人が、日本による第2次大戦中の侵略について日本は償っていないと感じていることが背景にある」と伝えた。

CNNも「国旗が焼かれ、日本製品の不買運動を叫ぶ声が上がった」「ブーイングは日本の国歌が聞こえなくなるほど大きかった」「スタジアムの外では中国人観客が数時間にわたって道路を占拠し、瓶を投げたり、日本国旗を焼いたりした」と放送した。

しかし、中国各紙は騒動については触れなかった。京華時報は「観衆約10人が警察に拘束された」と伝えたが、中国人観客のマナー改善を訴えてきた中国青年報は「アジア杯は円満に閉幕した」と平穏ぶりを強調。北京青年報も「観衆は速やかに帰途に就いた」と“予定稿”としか思えない内容を伝えた。

実際は、試合後の混乱は8日未明まで続いた。北京の日本大使館周辺の道路は警官隊が封鎖していたが、深夜の封鎖解除後、中国の若い男女約20人が大使館前で、中国国歌などを歌い「中国万歳」と気勢を上げた。日本代表が宿泊したホテルは、未明まで中国人群衆約1000人に取り囲まれた。警察当局は8日午前に日本代表が空港へ出発するまでホテル前の道路を封鎖。選手が乗ったバスはパトカーに先導されて北京国際空港に向かった。

BBCが「中国のファンの行動は、08年北京五輪で中国がナショナリズムをどのように抑えるかという課題を浮かび上がらせた」と懸念を示したように4年後の北京五輪に大きな課題を残した今回の騒動。ただ、国際問題に発展させたくない日本の外務省は「(日本人の)安全に影響が及ぶことはなかった。中国政府がスポーツマンシップにのっとって見るよう相当一生懸命(働き掛けを)やった」(川口順子外相)と、一定の評価を下した。

■警備不備と日本側に謝罪

北京の日本大使館によると、アジア杯決勝終了後の7日夜、日本公使の乗った車の後部ガラスが中国人サポーターに割られた問題で、北京市公安局は8日未明、大使館に「警備上の不備があった」と電話で謝罪した。公使の車は競技場から出ようとしたところを襲われ、同大使館が中国政府に抗議していた。

■中国の「民族感情」批判

8日付の台湾紙、中国時報は、中国のサポーターが「日の丸」を焼くなどして騒いだことについて「(反日の)民族感情を好き放題発散させていると、北京五輪のイメージを損なうことになる」と批判した。同紙は「試合に勝ち負けはつきもので『民族の恨み』のように見なすなら、北京五輪の際、(中国と戦争をしたことがある)日本やベトナムなどの選手は気をもむことになる」と「民族主義の高揚」に警鐘を鳴らした。