日本(FIFAランク23位)が7大会連続7度目のワールドカップ(W杯)出場を決めた。後半途中出場のMF三笘薫(24=サンジロワーズ)が試合終了間際に殊勲の2得点を挙げる大活躍。オーストラリア(同37位)を2-0で下したチームのヒーローになった。

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ヒーローの三笘は、笑顔でベンチの方へ向かった。次々とビブス姿の選手と、熱い抱擁を交わした。その中に、出場機会のなかったMF旗手がいた。川崎Fの同期入団の間柄。大学時代からのライバル。当時は順天堂大の旗手がずぬけていた。筑波大に在籍していた三笘を指導した同大・小井土監督は「三笘が『大学生の時から無双しているか』と言われたら、そうではない。大学の時は旗手の方が得点も取っていた。彼に負けている自覚はあった。対戦相手にライバル的な選手がいたことは、良かったと思う」とうなずく。学生時代からJを経て、海外に渡った。当時から約2年後。序列をひっくり返した。大一番で、主役へ上り詰めた。

ブレずに、オリジナルを求めてきたから、今の三笘がある。筑波大時代。小井土監督が尋ねた。「誰をイメージしているの?」。どんな理想の選手が返ってくるかと思ったら、三笘は「誰もです」と返答した。小井土監督は言う。「自分なりの、オリジナルの像はあったと思います。逆にこちらが絵を描いて、型にはめすぎてしまうと、いけないと言うか、作ってはいけないと思った。そういう、他にないタレントを持っていた」。指導者すら、そんな思いにさせてしまう。オンリーワンの雰囲気を漂わせ、独自の色を描き続けた「三笘薫」が日本をW杯へ導いた。【栗田尚樹】

<三笘薫(みとま・かおる)アラカルト>

◆生まれ 1997年(平9)5月20日生まれ、川崎市出身。

◆ゼミ 川崎Fの下部組織から進学した筑波大蹴球部・小井土正亮監督の「サッカーコーチング論研究室」。卒業論文のテーマは「サッカーの1対1場面における攻撃側の情報処理に関する研究」。

◆プロ1年目 川崎Fで新人最多タイの13得点、J1最多12アシストで、ベストイレブン選手間投票で最多得票。

◆ジョーカー 20年はJ1リーグで30試合中19試合、13得点中8得点が途中出場から。面白いように相手を抜く「ヌルヌルドリブル」で圧倒し、海外移籍。

◆移籍 昨年夏にプレミアリーグのブライトンに移籍し、現在は期限付き移籍でベルギー1部のサンジロワーズでプレー。

◆お隣さん 俳優・松重豊。同氏が川崎F応援番組で、三笘が幼少期にマンションの隣の部屋に住んでいたと明かす。

◆三笘警察 名字を、草かんむりの「苫」と漢字を間違えられがち。活躍した試合後のSNSには漢字の間違いを正すため、パトロールする“三笘警察”が現れることも。