日本(FIFAランク23位)は6日の国際親善試合でブラジル(同1位)と対戦する。日本にとって、ブラジルサッカーは永遠の憧れだ。多くのブラジル人選手や指導者から影響を受け、日本リーグからJリーグ、ワールドカップ(W杯)常連へと成長してきた。そのブラジルに心酔し、今もボールを蹴り続けるJFL鈴鹿ポイントゲッターズのFWカズ(三浦知良、55)。ブラジルと日本を愛する男が、新しい国立競技場で行われる歴史的な一戦を前に熱く語った。

カズ 一ファンとしてすごく楽しみにしているよ。ブラジル代表だからね。もちろん、韓国戦も見たよ。日本代表のパラグアイ戦とキックオフがずれていたし、ブラジルが見たかったからね。感想? 最高でしょ。

カズにとって、ブラジルは特別だ。高校入学の希望進路に「ブラジル」と書き、静岡学園高を1年で中退して15歳で単身渡った。満足でない衣食住、24時間以上のバス移動の末に荒れたピッチ、日本人への偏見…、苦難の末、ブラジルでプロサッカー選手としての成功を手にした。

カズ ブラジルで育って、プロになった。あそこで戦えたことは今でも誇りだし、今できているのもあの時代があったから。基本的に、僕はブラジルなんだよ(笑い)。

カズだけではない。日本サッカーにとって、ブラジルは特別な存在。50年前の1972年、ブラジルでプロとして活躍していたセルジオ越後が日本リーグの藤和不動産(現湘南)入り、その魔術のようなテクニックに日本中が驚愕(きょうがく)した。その後も多くの選手が日本で活躍した。日本は、多くのことをブラジルから学んだ。

カズ Jリーグができる前にネルソンさん(吉村=ヤンマー)や与那城さん(ジョージ=読売クラブ)、ラモスさんたちからブラジルサッカーの神髄や技術を輸入した。ブラジルの選手がJリーグができる前にプロのメンタルを教えてくれた。ブラジルは常に我々の手本だったし、これからもそうあり続けてほしい。

日本代表とブラジル代表が初めて対戦したのは1989年7月23日。スコアは0-1だったが、完敗だった。GK森下申一が好セーブを連発。32本のシュートを止めたが、ロマーリオと交代した19歳のビスマルク(後にV川崎、鹿島で活躍)にゴールを許した。

カズ 南米選手権優勝後のベストメンバー相手に、ほとんど日本はハーフウエーラインを越えられなかった。黒崎(久志=本田)がハーフからシュート打ったのは覚えているけど(笑い)。

この試合の5日前にカズはコリチーバのFWとして日本代表と対戦している(1-0)。試合後に「僕を代表に入れて」と横山謙三監督に直訴。「そんなこと、言ったかなあ」と苦笑いしながらも「若かったし、イケイケだったからね」。翌90年に帰国すると、公式戦を1試合もしないまま代表入り。今度は自分がブラジル代表と対戦した。

カズ 3回やった。国立と長居でも。勝つつもりではやったけれど、やっぱり強い。それが、うれしくもあった。ブラジルは常に強くあってほしいという気持ちが強い。たとえ、日本が相手でも。

初対戦から数えて2分け10敗。内容的には惜しい試合もあった。ワンサイドだった初対戦から比べて、実力もサッカー界での立場も変わった。

カズ 日本は進化したよね。ただ、日本だけじゃない。ブラジルも進化している。今回も厳しい試合になるよ。ただ、昔はロナウドとかベベットとか名前で負けていたけど、今はチームメートもいるし、リーグでの対戦を経験している選手も多い。そこは強みだね。

11月開幕のW杯カタール大会1次リーグでドイツ、スペインという強豪と同じ組に入った日本にとっては、数少ない「世界のトップ」を経験できるチャンス。それを生かしてほしいと願う。

カズ スタイルは違うけれど、得るものは大きい。ヤスさん(鈴鹿三浦泰年監督)が言うんだけど、経験だけで終わるのと体験にするのは違う。得たものを身につけてW杯に向けて生かす。「経験」を「体験」にする。それが大事だと思う。

日韓W杯開催20年、同大会優勝のブラジルを招いての国立競技場初の日本代表戦とあって、日本協会は多くの関係者を招待している。カズも招待されたというが、今はリーグ戦の真っ最中。JFLでの試合復帰に向けて痛めている右太もものリハビリを続けている。

カズ 国立には行かないけれど、テレビで見るよ。日本とブラジルの両方を応援する。国歌も両方歌えるから(笑い)。

相手はブラジル、場所は国立競技場、ともにW杯への貴重な試合。カズだけでなく、日本中のサッカー関係者やファンが楽しみにキックオフの笛を待つ。【荻島弘一】

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