サッカーのイングランド女子スーパーリーグがいよいよ開幕する。ウェストハムから強豪マンチェスター・シティーへ移籍が決まった日本代表MF長谷川唯(25)が日刊スポーツのインタビューに応じた。昨夏の東京オリンピック(五輪)ではチームの中心として臨んだが、準々決勝で敗退した。2季前からプレーする欧州で、今季から屈指の強豪に加入。23年女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会で、なでしこジャパンを上位進出させるため、自らを磨き続ける。【取材・構成=磯綾乃、岡崎悠利】

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なでしこジャパンがアジアで初のW杯優勝チームとなってから、11年が過ぎた。当時14歳だった長谷川は21年に日テレ東京VからセリエAのACミラン、そしてプレミアリーグのウェストハムを経て、マンチェスターCへ。欧州で3クラブ目の挑戦となる。

長谷川 サッカー自体も種類が違うというか。縦に速く、日本よりも個で勝負するところがある。特に守備で他の選手の特徴を考えて、ボールがきそうなところを予測するとか、たとえ自分たちがやりたい形でなくてもボールを奪うというところは(日本とは)やり方を変えている。

なでしこジャパンを引っ張る1人。金メダルを目指した東京五輪は準々決勝でスウェーデンに敗れた。

長谷川 悔しさがなくなることはない。あの大会が、いろいろなことを考え直すきっかけになった。やるべきことが見つかった。

米国と優勝を争っていた時代から勢力図は変化。特に欧州各国は体格に加えて足元の技術も向上し、パスサッカーは日本だけのお家芸ではなくなった。

長谷川 海外のチームが戦術も技術も上がる中で、自分たちは試合途中で変化を加えることができなかった。陣形はあっても、場面場面で個人が考える力を伸ばさないといけない。

欧州に渡って3季目。なでしこジャパンの現在地をどう見ているのか。

長谷川 今のやり方で上を目指すのも大事。ただ、欧州の代表は急激に伸びて、技術も戦術も上をいっている。今のままではきついかもしれないという思いもある。

まずは自分自身がよりレベルアップすることに集中する。高め合える存在として、同リーグのアーセナルに所属するMF岩渕真奈(29)がいる。日テレ東京Vの下部組織時代から背中を追いかけてきた存在だ。

長谷川 先輩ですが、いい意味で年齢が離れていない感覚。普段から料理を作ってもらったり。多い時には週に1回会うこともあります。

ピッチを離れれば、優しく楽しい友人のような先輩。日本代表への思いは、ともに熱いものがある。

長谷川 もちろん自分も代表を引っ張るという気持ちはある。まずはイギリスでどれだけ成長できるかを大事にしている。個人の能力を高めて、代表として戦った時に「レベルアップしたな」と思われるプレーをしたい。

ウェストハムでのプレシーズンマッチでFKを決めた際は、SNSなどを通じて拡散され注目も集まった。17歳のころには「マイナーなスポーツの女子アスリート」を特集したテレビ番組に出演した経験もある。

長谷川 日本にいる人たちに届けることは大事だと思った。今は(国内も含め)プロ化した。地域の方と交流する時間を増やすとか、ピッチ外でもできることがある。ただ、まずはなでしこジャパンが結果を出すことが一番だと思っている。

イングランドで存在感を示す。そしてW杯で結果を残し、もう1度女子サッカーへの注目を取り戻す-。期待も重圧も力に変えて、長谷川が日本女子サッカーを高みへ連れていく。

◆長谷川唯(はせがわ・ゆい)1997年(平9)1月29日生まれ、宮城県出身。09年に日テレ東京Vの下部組織・メニーナに入団し、13年にトップ昇格。21年にイタリアのACミランに移籍し、同年の8月にウェストハムへ加入。世代別代表にも名を連ね、14年U-17W杯で初優勝にも貢献した。なでしこジャパンでは昨年の東京五輪に出場するなど、ここまで59試合出場、14得点。157センチ、47キロ。