元日本代表MF藤田俊哉氏(50)が、ワールドカップ(W杯)カタール大会前の最後の実戦シリーズとなる23日の米国戦(日本時間午後9時25分)を展望した。攻撃陣に関してはMF堂安律(24=フライブルク)とFW鎌田大地(26=Eフランクフルト)中心の起用を提案した。

米国戦は、タレントぞろいのアタッカー陣をどう組み合わせるか注目したい。日本代表の基本システムになっている4-3-3、4-2-3-1でも、ストライカーとして日本代表をけん引してきた大迫はいない。そこを誰にするのか? どのポジションにどの選手を配置したら相手にプレッシャーを与えられるか。より効率よく得点できるか。W杯本大会1次リーグ3試合、さらにその先の決勝トーナメントを想定して、どう選手をマネジメントするのか。W杯までの米国戦を含む残り3戦でシミュレーションしないといけない。

推奨したいのは、現在好調な鎌田と堂安を中心に攻撃陣を組み立てること。多くの日本人選手がブンデスリーガでプレーしているが、この2人の現地での評価は別格だ。W杯初戦のドイツを考えた場合、この2人を中心に攻撃陣を組み合わせた方が効果的で、相手に対するインパクトも大きい。堂安は前線でボールキープできるだけの力強さがある。突破力もありシュートも魅力的。鎌田はフィジカルコンタクトが少ないスペースでボールを受け相手の脅威となるプレーで自ら得点を狙う。アシストも期待できる。

この2人を中心に古橋らのFW陣と伊東、南野、三笘、久保らをどう絡めるのか。ここは森保監督の腕の見せどころだろう。今は情報量が豊富な時代だから相手の分析はできる。一方では日本選手の情報も当然分析されている。秘密兵器や隠し玉と表現された時代が懐かしい。どのチームも相手の情報は十分すぎるほど取得している。

それならば、直前まで好調を維持している選手が本大会でプレーすべきだろう。そのインパクトが相手選手へのプレッシャーにもなる。W杯初戦のドイツなら現在ブンデスリーガで結果を残し、強い印象を残している鎌田と堂安なら威圧感を与えられる。W杯初戦で点を取って勝ち点を取るためにも今回の2試合で彼ら2人を生かす組み合わせを試す必要がある。

また大きな大会になると、セットプレーで勝敗が決まることが多い。どんなに集中した中にも一瞬の気の緩みが出ることもあるからだ。前回W杯のイングランドや昨年欧州選手権のイタリアなど、例を挙げるとキリがないくらいだ。その意味でも堂安と鎌田には期待が大きい。今の日本代表には中村俊輔や遠藤保仁のようなFKのスペシャリストはいないが、あの2人(鎌田と堂安)のキックの質は高いと感じる。さらに実践でトライする回数を増やせばその精度も上がる。それも楽しみなポイントである。

今の日本代表は守備で大崩れしない。前線からDFラインまでの連係でどの相手にも簡単に失点を許さない。一方でよく言われることは得点力不足。これは日本代表だけの話ではないが所属チームで結果を残している鎌田と堂安が本大会でも普段通りの動きを見せ、可能性を秘めたタレントがそろう攻撃陣がうまく絡めば、日本はW杯で世界を驚かすことができる。今回の2試合で十分にその準備をしてくれると期待している。

◆藤田俊哉(ふじた・としや)1971年(昭46)10月4日、静岡市生まれ。清水商高、筑波大から95年に磐田入団。01年にはJリーグMVP。12年引退。オランダVVVのコーチやリーズのフロントスタッフ、18年から日本サッカー協会の欧州駐在強化部員として日本人選手のサポート、欧州クラブとの橋渡し役も務めた。今月、黄金期を築いた古巣の磐田の強化責任者にあたるスポーツダイレクターに就任。元日本代表。