春の珍事とは呼ばせない-。“下位常連”だった北海道コンサドーレ札幌がガンバ大阪を2-0で下し、10戦負けなしでACL出場圏の3位をキープした。前半39分にMF深井一希(23)が先制点を挙げ、後半27分にはFW都倉賢(31)がクラブのJ1通算250得点目。J1では年間11位が最高成績のチームが、今季就任したミハイロ・ペトロビッチ監督(60)の下で攻撃的サッカーを実践し、成長を続けている。

 札幌の快進撃が止まらない。前半にDF福森の左クロスのこぼれ球を深井が押し込んで先制し、後半27分は都倉の鮮やかなオーバーヘッドで加点。G大阪をホームで沈め、これで10戦負けなしだ。ピッチぎりぎりまで近づき、ドイツ語で指示を出す姿が札幌でもおなじみとなったペトロビッチ監督は「選手が絶対に勝つという気持ちを前面に出してくれた」とほほ笑んだ。

 「攻撃は最大の防御」を掲げる指揮官は広島、浦和を経て、Jリーグ通算13シーズン目。キャンプは体力強化より、戦術の浸透に専念した。3-4-2-1の位置によって色を分けたビブスを選手に着用させ、ミニゲームを繰り返した。サイド攻撃のオートマチックな動きを目でも分かりやすく体に染み込ませた。攻撃の組み立てにGKも絡むなど、昨季まで堅守に軸足を置いたチームは衝撃を受けた。札幌11年目の主将のMF宮沢は「今までの札幌にはなかった攻撃的な思考」と言い、都倉は「無知の知だった」と振り返る。

 今季は13試合中8試合で相手のシュート数を上回る。34試合で17試合だった昨季より攻撃力が高まっていることを示し、リーグ2位の総得点20が好結果につながっている。実戦中心の練習だけでも走力は磨かれ、後半に勝ち越し点を奪って勝利した試合は3度。指揮官は「今があるのは、つらいキャンプを乗り越えたからハードに戦えている」と粘り強さを身に付けたチームに誇らしげだった。

 ペトロビッチ監督自身はJ1監督通算172勝とし、外国人の最多記録に王手をかけた。練習中に選手の姿勢が気に入らず「だからエレベータークラブといわれるんだ」と叱ったこともあった。昨季16年ぶりの残留で今季はJ1定着を目標に掲げていた札幌が、ACL圏内で堂々と上位争いを演じている。【保坂果那】

 ▼札幌の記録メモ クラブのJ1記録を更新する10戦負けなし(7勝3分け)で3位をキープ。ホームでは5連勝で、01年3~5月の4連勝を更新するクラブのJ1新記録となった。札幌がJ1で3位以内は、岡田武史監督時代の01年4月、第1ステージ6節の2位以来、17年ぶり。10戦以上消化してのトップ3入りは今季が初めて。J1年間最高順位は01年と昨年の11位。シーズン途中では開幕当初を含めても2位が最高。