東京ヴェルディDF平智広(28)が、大宮アルディージャ戦で、数的不利の苦境をはね返す値千金の決勝弾を決め、チームを横浜FCとの2回戦(午後1時キックオフ、ニッパツ)に導いた。

平は試合後、多くの報道陣に囲まれ「(そういう機会は)ないっすよ」と笑った。後半26分、FW佐藤優平の左FKに飛び込み、頭で合わせてゴールに流し込んだ。「自分の頭に当たっただけ。右の頭の横に当たった感触があった。あの位置で、GKに向かって巻いてくるボールは嫌だと思うので。前半も何度かチャンスがあった。自分たちの狙いのボールを蹴ってくれた」と佐藤に感謝した。

年間順位で1つ上の大宮とのアウェー戦は、先に進むには勝利が絶対条件だった。序盤から持ち前のボール回しで主導権を握り、試合を支配し続けたが、後半14分にMF内田達也がこの日、2枚目のイエローカードで退場し、数的不利となった。

その中でも、焦りはなかった。後半25分、それまで左サイドを切り裂き続けていたDF香川勇気が、左サイドの深い位置でDF酒井宣福に倒されてFKを得た。「サイドの深い位置でセットプレーを取れればチャンスだと思った。勇気がいいところでセットプレーを取ってくれて、全員がチャンスだと思った」。

リーグ戦でも、相手ゴール前でセットプレーのチャンスがあれば、平とセンターバックでコンビを組むDF井林章が前線に上がり、得点を狙うのが武器となっている。11日のカマタマーレ讃岐とのホーム最終戦でも、前半38分に浮き球を平が頭で落としたボールを、井林がゴールに蹴りこみ1-0で勝利。「セットプレーは自分たちの強み。ニアで触るだけのボールは、良いキッカーもいるし信じて入るだけ。そこは練習していました」。迷いすらなかった。

ゴールを決めた瞬間、緑のチームカラーで染まったスタンドに走った。「自分でも、あまり点を決めていないので、喜び方を知らない。取りあえず応援してくれるサポーターに感謝を伝えたくて走った」。今季、リーグ戦26試合に出場しDFながら2ゴールを決めているが、謙遜した。

東京Vの下部組織から法政大に進み、13年に同じ東京都をホームにするFC町田ゼルビアに入団してプロとなった。16年に東京Vに移籍し古巣に戻ったが、今でも記憶の底には、ユース時代に東京VがJ2降格に涙した08年の光景があった「僕がユースの時、J1で戦っていた。その光景は、今でも忘れない。味の素スタジアムで戦うのを見て、僕も戦いたいと思った。得点が出来て良かった」と喜びをかみしめた。

17年は、初めて進出したJ1昇格プレーオフ1回戦でアビスパ福岡に0-1で敗れ昇格を阻まれた。前年と同じ年間順位下位の立場で戦い、1回戦の壁を乗り越えた。平は「去年とは違う選手もいるけれど、ロティーナ監督の戦術の理解が深まっている。(引き分けでも負ける)自分たちに守りに入る時間帯はないと思っている」と12月2日に行われる年間順位3位の横浜FCとの2回戦(午後1時キックオフ、ニッパツ)に気合を入れた。【村上幸将】