昨年度天皇杯王者のヴィッセル神戸が、もがき苦しんでいる。

J1リーグ戦は、最近9試合で1勝1分け7敗と大きく負け越し。順位こそ11位だが、ACLのために他クラブより日程消化が早く、既に32試合を終えている。今後は下位勢に追い抜かれる可能性がある。

不振の最大の原因は、現時点で18クラブ中ワーストの57失点という守備面だ。試合数が違うので単純に比較できないが、最も堅守の川崎Fの23失点とは34点差もある。攻撃面は川崎F、横浜に次ぎ、50得点は全体の3番目の多さだが、平均すれば1試合約1・6得点しながら、約1・8失点で負けている計算だ。

MF山口蛍(30)は17日、神戸市内での練習後、オンラインで取材対応して問題点を指摘した。

「1人1人が、もう少し味方を助ける動きとか、攻守両面においての一体感、サポートが足りないのかなと思う。失点場面でも、自分は関係ないよ、ということが多いかもしれない。そこのすり合わせをやっていかないと。これだけ得点して勝てない…毎試合2失点くらいしている」

前節湘南ベルマーレ戦後も厳しい言葉が出た。

DF西大伍(33)は「調子とか言う前に弱い。力がない。(足りていないのは)選手の質じゃないですか。(互いの)要求がまだまだ足りていないと思うし、準備の段階、練習の質がまだまだ。僕ら同じレベルでいたら停滞は後退(を意味する)。成長を続けていかないと」。

FW小川慶治朗(28)も「球を失って、かなりの高い確率で失点している。まだ甘い。それぞれを人のせいにして、人のミスをカバーできていない。チーム全体の課題」。選手の実績では明らかに神戸が上だが、湘南に結果的に0-2の完敗。選手のコメントから、一丸になれていない現状が浮き彫りになる。

天皇杯でクラブ初タイトルに導いたフィンク前監督が退任し、その後は代行指揮の1試合をはさみ、三浦淳寛監督(46)になって12試合で4勝1分け7敗。最初に守備の改善を掲げてスタートした新体制だが、シーズン途中での修正がいかに難しいか分かる。

三浦監督は、17日の取材で「自分の人生と照らし合わせれば、うまくいった時もあれば、うまくいかない時も結構あった。メンタリティーを変えていかないといけない」と選手に奮起を促す。18日は今季ホーム最終戦の浦和レッズ戦があり「守備は、失点が続いているので修正しないといけない」と語った。

元日本代表で多くの修羅場を経験してきたFW田中順也(33)は「意思疎通を図ることが大事。僕はベテランだが、僕の守備が間違っていたら細かく指示を出してくれと、仲間には言っている。そこは年齢とか国籍は関係なく、レベルを上げていかないといけない」と胸の内を明かす。

山口は「これだけ点を取られると、危機感を持たないとと思う。(誰かに頼るといった)依存はなく、逆に選手は自己主張が足りない。本当に言い合ってもいいから、局面において簡単にクロスを上げさせずにいけやとかが、すごく足りない。失点した時も、そういう主張すらない感じ。バチバチした言い合いや、指摘をもっとしていっていいのではないか」と続けた。

浦和戦を終えれば、中断していたACLのためにドーハへ飛び立つ。クラブ悲願の目標は、アジアNO・1の座。G組での初戦は25日の広州恒大(中国)戦になる。【横田和幸】