青森山田高から入団4年目のヴィッセル神戸MF郷家友太(21)が、被災地への思いを決勝点に込めた。

2点リードを追いつかれた後半40分、右足で放った強烈なシュートがポストに当たった。「正直、2-2に追いつかれて(このままいけば)負けに等しい引き分けだと思っていた。何としても勝ちたい気持ちが、あのこぼれ球に脚を持っていった」。一目散にゴールへ駆けだし、足元に戻ってきたボールを流し込んだ。

「毎年、3月になると特別な思いがあります。特に今日は試合っていうのが重なって『結果でいいニュースを届けよう』と思って(ピッチに)入りました。ゴールで、いいニュースを届けられたかなと思います」

生まれは宮城・多賀城市。小学5年で経験した東日本大震災から、11日で丸十年となる。少年は当時、ベガルタ仙台の試合を見て勇気を与えられた。知人が亡くなり、悲しい思いに暮れていた時、前を向く一助となったのが、スポーツ選手が見せる活躍だった。

10年が経過し、立場は変わった。青森山田高で全国制覇を経験。プロ4年目を迎え、日本一となった高校2年時につけた背番号「7」を背負うことになった。開幕前には「縁起のいい番号。番号が全てじゃないけれど、そういうところからもタイトルを取ることを目標にスタートした」。中心選手としての自覚をにじませていた。

東京五輪も狙える21歳は今季初得点をかみしめ、さらに強い決意を口にした。

「(開幕前から目標に掲げる)2桁得点は自分にプレッシャーをかけている意味もこめて設定しています。何としても『今日は決めたいな』っていう思いで臨みました。カウントしていったら、あと9点。ちょっとプレッシャーが解けた。大きいことを言っているので、3節目で1点取れたのは、これからの戦い方、プレーに影響してくると思います」

故郷だけでなく、チームであり、自らの背中を押す、東京の夜になった。【松本航】