FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で2試合に出場したDF酒井宏樹(32=浦和)と、柏時代のチームメートの大津祐樹(32=磐田)が17日、大津の母校・成立学園高の校庭でサッカー教室を開催した。

2人は19年から株式会社ASSISTを運営しており、大学サッカー部のサポートや備品支援などを展開。大津が代表取締役社長、酒井が取締役を務める。現役選手であるからこそ、伝わる思いがあると信じている。

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気温10度を下回る寒空のもと、甲高い声が響いた。

「酒井選手、うますぎる!」「大津選手、ドリブルすごい!」

現役Jリーガーにボールが渡るたびに、120人の子どもたちが声を上げる。時間はあっという間に過ぎた。酒井は「子どもたちとふれあえて、すごくいいなと思いました」と充実感をにじませた。

酒井がカタールから帰国したのは12月7日。その4日後の11日には、大津とともに新幹線で富山県へ向かい、サッカー教室イベントを開いた。

さらに中5日で、東京でイベントを開催。相当なスピード感をもって、子どもたちとの交流の場を設けた。

「全て大津くんがオーガナイズしてくれているので、『来い』と言われたら行きます」

疲労感をみじんも感じさせない笑顔を見せる酒井。その横で笑った大津は「僕だけではなく、酒井の意見もありました」としつつ、ひときわ真剣な目で続けた。

「W杯後に開催する価値はすごくあるんじゃないかと。酒井からも経験を子どもたちに還元できる環境を作れないかという話はあったので。リアルに子どもたちと会って交流する、そういったことが熱気にもつながると思う」

W杯に出場した選手が、すぐに足を運ぶこと。そこに価値を見いだす背景には、少年時代に抱いた飢餓感がある。

「現役選手が実際に子どもたちの前でプレーすることは、なかなか僕の時代にはなかったので」(酒井)

「僕らは現役選手から伝えてもらっていなかった。伝えてあげることで、サッカー選手になる確率を高められたり、サッカー選手になるためにどういうサポートをすればいいのかを共有できたりする」(大津)

2人にとって、バリバリのサッカー選手はテレビの向こう側の存在だった。もしその人たちに会えていたら…。その思いが、自らを突き動かす原動力となっている。

酒井は子どもたちの目は「輝いていた」と振り返りながら、願いを口にした。

「ただ、W杯以外でも、輝かせてほしいので、これからまた頑張っていきたいと思います」

寒さでかじかむ手を、ぎゅっと握った。

現役アスリートだからこそ、言葉やプレーに説得力が帯びる。2人はそう自覚しているからこそ、今の自分の影響力を大切にしている。【藤塚大輔】