新潟医療福祉大サッカー部の佐熊裕和監督(59)が今春で就任10年目を迎える。先月に行われた全日本大学選手権(インカレ)では北信越勢で初めて決勝(東京・国立競技場)に進出し、準優勝に輝いた。これまで輩出したプロ選手は桐光学園高(神奈川)時代を含めて55人以上。勝利と育成を両立させる名将が今後の目標、そして地方大学の可能性を語った。【聞き手=小林忠】
-就任10年目のシーズンが始まる
佐熊監督 インカレで1つ結果は出せたが現チームが成し遂げたことではない。毎年、選手は変わる。全国大会、天皇杯に出場し続けることは絶対。全カテゴリーで成長と勝利を追求する
-1月19日から新チームが始動した。
佐熊監督 インカレを経験したメンバーが中心だが、選考は横一線。1つのポジションを2、3人で争う。セカンド、サードチームからの突き上げもあるので、競わせながらレベルアップを図っている。
-インカレでは初めて8強の壁を突破。そのままの勢いで決勝に進出した
佐熊監督 短期決戦では波に乗れるかが重要。(4得点で大会得点王の)FW田中翔太(新4年)に「当たりそうだな」というにおいがあった。チームマネジメントとしては要所でポイントになる選手を気持ちよくさせながら、メリハリをつけた。
-新チームは大舞台を経験した主力7人を含め、多くの選手が残る
佐熊監督 経験をアドバンテージにしなくてはならない。メンバー入りした20人はチームのベースを上げる責任がある。肌で感じた高いレベルの物差しを基準にしなければならない。
-「物差し」とは
佐熊監督 判断、技術、強さなど全て。メートル、ミリ単位でこだわれるか。数値では表せない部分だが、チームが歴史を刻んでいくためにも常に全国を想定した基準で日々の練習、試合に取り組む必要がある。
-新チームはどんなサッカーを展開する
佐熊監督 FWの田中を起点にサイドアタックを狙う。最終ラインにキック精度の高い選手もいるので、攻守の切り替えを速くしながら、ボールを保持して攻め勝ちたい。
-今春卒業する4年生は4人がJリーグに進む。大学生の指導で大切にすることは。
佐熊監督 基本的には長所を伸ばすこと。長所を磨くことでおのずと短所は薄くなっていく。超一流の選手に勝てそうな武器、化けそうな選手を預かり、輝かせることが1つの仕事であり、おもしろみでもある。
-新潟から全国で勝つことに挑戦する
佐熊監督 地方大学はいいサッカーをやるけど(全国で)勝てないと言われている。地方だからこそ、もっと結果にこだわりたい。
-4月から部員は100人を超える。強化はどう進める
佐熊監督 個を伸ばせば組織も伸びる。全スタッフのベクトルはミリ単位でそろっているので、全カテゴリー同じ方向を向いてやっている。今までやっていることを継続、進化させ、チームの歴史、伝統を刻んでいく。
◆佐熊裕和(さくま・ひろかず)1963年(昭38)12月1日生まれ、東京都出身。86年に当時無名の桐光学園高サッカー部(神奈川)の監督に就任し、13年までの27年間で高校選手権準優勝1回、4強1回、インターハイ準優勝1回と強豪校に育て上げた。13年に日本サッカー協会S級ライセンスを取得し、同年に中国3部リーグの梅縣(バイケン)を指揮した。14年に新潟医療福祉大サッカー部監督に就任。北信越大学1部リーグは17年から6連覇中。これまでプロに育てあげた選手は、中村俊輔氏(J1横浜FCコーチ)、鈴木孝司、シマブク・カズヨシ(ともにJ1新潟)ら55人以上。
◆インカレV 今回の71回まで地区別の優勝は関東地区が61回、関西地区が8回、東海地区1回(69回は中止)。同地区の同時Vは3回ある(関東2、関西1)。この3地区以外の大学の決勝進出(準優勝)は九州が3回、東北が1回あり、北信越では今回の新潟医療福祉大が初だった。