Jリーグは1993年(平5)5月15日に産声を上げ、30周年を迎えた。

72年(昭47)にブラジルから来日し、日本サッカーの発展に寄与してきたセルジオ越後氏(77)が、この30年を振り返った。今日から2回にわたり、リーグが抱える現状と課題を鋭角な視点でえぐる。

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30年たった今、Jリーグはうまく回っているのだろうか。コロナ禍から社会が本格的に動き出し、各スタジアムにもお客さんが少しずつ戻ってきた。DAZNとの放映権契約は年間平均200億円で、10クラブでスタートし、全国にJクラブは60にまで増えた。浦和はアジア王者に返り咲いた。一見、右肩上がりだ。

でも内実はどうだろう。この30年間、つぶれたクラブは多い。親会社が変わり、株の譲渡などでクラブ名だけが存続している。しかし、厳密にいうと1度つぶれて、ホワイトナイトが現れたりして存続しているという表現がより現実的だ。

プロ野球との差別化で、Jリーグ創立時は地域密着を唱えたが、実際には日産やトヨタ、住友金属などの企業に頼る経営。それが今はIT企業に頼っている。経営母体が変わっただけで、クラブの社長は親会社からの天下りが多く「経営」より「管理」することがクラブ運営の主体となった。

これでは長期的なクラブ強化はできないし、親会社が方針を変えれば、ビッグクラブが一気に小規模のクラブに変わることもあるだろう。親会社としても、例えば名古屋がJ1で優勝してもトヨタの株価は上がらないし、J2に降格したとしても株価は下落しない。

日産(横浜)もパナソニック(G大阪)も同じだろう。この状況下で親会社は思い切った投資はしない。年間10億~12億円程度のスポンサー料を払って現状を維持することを選択する。チームをつぶして企業のイメージが悪くなることは避けたいだけで「管理」をしっかりすることを優先する。

地域密着。JリーグとJクラブはこのきれいな言葉でごまかさずに、まずは現状をしっかり認めることから始めないといけない。きちんと現状をファン、サポーターに伝えて、その打開策を一緒に考えるべきだ。クラブの経営者を「サッカーは知りません」と平気で言う天下りの社長ではなく、サッカーに愛着のある人、長年サッカーに関わってきた人がクラブの会長選に立候補して、ソシオ(サポーター)とスポンサーなどで形成されるグループの投票で決めればいい。

百年構想もそうだ。いかにも長期計画で日本にサッカー文化を根ざしたい、という理想から作られた言葉だが、こんな無責任な言葉はない。この言葉を決めた人で、100年後も生きている人はいない。理想を唱えることも大事だが、まずは目の前の1年1年を充実に過ごすことに重点を置いてほしい。(日刊スポーツ評論家)

◆セルジオ越後(えちご)1945年7月28日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身の日系2世で18歳で名門コリンチャンスとプロ契約し、ブラジル代表候補にも選ばれる。72年に来日し、J1湘南の前身の藤和不動産でプレーした。93年4月から日刊スポーツ評論家。06年に文科省生涯スポーツ功労者として表彰された。