明治安田J1の新シーズンに臨む東京ヴェルディの城福浩監督(62)が23日、開幕戦(25日、対横浜F・マリノス)に向けて東京・稲城市のクラブハウスで記者会見を開いた。そこで口にしたのは「強いヴェルディ」を復活させたいといういちずな思いだった。

1993年5月15日に国立競技場で産声を上げたJリーグ。そのカードは今回と同じ国立での横浜相手だ。

「(東京Vの)この歴史はどこにもまねできない唯一無二のものがある。だからこそ開幕戦でマリノスを用意してもらえた。あらためてヴェルディのブランド、持ち得る可能性、Jリーグ全体に影響を及ぼせる価値があると思っています」

2008年シーズン以来、16年ぶりのJ1。クラブ、サポーターにとっては待ち焦がれた舞台だ。

「クラブはこの15年の苦しさを持っている。そこには必ず背景がある。その苦しさを考えたら絶対に(J2には)戻りたくない。クラブ経営、在り方として戻ってはいけない。いかに第2章を、我々らしいビジョンを持ちながらやれるか。ようやくスタートラインに立った」

22年6月から指揮を執る城福監督は、ヴェルディというクラブが持つ大きな可能性を感じ取っている。

「着任した頃は平均入場者数は5000人を切るくらいだった。それが1年半後には10倍の観客と戦う、それはクラブもフロントも経験したことがない、選手も当たり前です。もっと言えば22年の6月には想像もできなかった。だけどもヴェルディを待ってくれていた方々がいる」。

行政からは以前にも増して協力があり、スポンサーも一気に増えた。まだ経営規模はJ1で戦うには不足しているが、取り巻く環境も右肩上がりのようだ。

「形としていろんなものが入ってきた。やっぱりヴェルディは捨てたもんじゃないし、ヴェルディを待ってくれていた人がいる。本当に苦しい時代があったからこそ、その反作用があった。本当に苦しい状況を分かっていたからこそ、こういう現象が起きている。それは自分も感じている」

城福監督は自らの指導者人生は「第4コーナーを回った」と表現する。その中で日本サッカーのために自分は何ができるのか? そう考えた時にヴェルディがJ1に戻り、再び優勝争いすることを思い描いた。これは東京Vからオファーが届く前に頭に描いていたことだった。図らずも声がかかり着任、その思いを一層強くしたという。

「自分がサッカー界に何ができることとは、やっぱりJリーグの価値を高めたい。ヴェルディはJ1に戻るべきだと思ったし、優勝争いで復活するのが今のJリーグで一番のインパクトがある。そこまでどれだけ時間がかかるか分からないが、まい進したい。生活、指導者としてのリスクがあると思うけど、世の中はすべてハイリスクハイリターンなんです」

そして会見の中で何度も繰り返したのが「サポーターのためにも」という思いだった。

「31年後の開幕戦をJ1で迎えられる。これまでサポーターの方々は苦しい時に背中を押してくれた。順風満帆じゃなかった、そういう時に背中を押してくれました。だから彼らを喜ばしてあげたいなと思っています」

平均年齢24・1歳という若いチーム。誰かに頼るようなチームづくりはしない。

「我々は1人、2人に頼らないサッカー。若い選手が成長してくれてビッグネームがいるクラブに勝っていく。彼らを成長させることが大事。毎試合から学んでいく。成長という単語が一番大きくなってくる。誰かでなく、全員がエネルギッシュにアグレッシブにやる。105メートル、68メートルのピッチを攻撃する時は広く、守備する時は狭く。このメリハリを日本では3本の指に入るように。メリハリをしっかりつけられるようにしたい」

開幕戦で戦う横浜は、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で日本勢で唯一8強に進出。アンデルソン・ロペス、ヤン・マテウス、エウベルのブラジル人トリオ、快足アタッカー宮市、さらに両サイドバックもどんどん前へ仕掛けてくる攻撃力はJリーグでも屈指の強さを誇る。しかもACLで既に2試合をこなし、ゲーム慣れしている。

「我々は初の試合になるが、持っているものをすべて出させてあげたい。相手をリスペクトしすぎずにやる」

開幕戦のチケットは売れており、国立は5万5000人の入場が予想されている。Jリーグ屈指の熱血指揮官に率いられ、「強いヴェルディの復活」という大命題を掲げての挑戦が始まる。【佐藤隆志】