元日本代表DF小村徳男(39=JFL鳥取)が、今季限りで引退することが23日、明らかになった。93年のJリーグ開幕前から長く一線で活躍してきた小村は、今季開幕前に横浜FCからJFLのガイナーレ鳥取に移籍。Jリーグ入りを目標にチームを引っ張ったものの昇格を逃し、指導者としての第2の人生に向け、スパイクを脱ぐ決意を固めた。クラブは慰留したが本人の意志は固く、クリスマスイブの24日に正式発表される。

 J1、J2、JFLと5チームを渡り歩いてきた鉄人DFが、ついに現役を退く決意をした。「だいぶ悩みましたが、次の人生を考えて決断しました」。来年で40歳。クラブからは契約延長を打診されてもいたが「チームとの考え方の違いもあったし、自分のイメージするプレーができなくなったのも事実です」と、決意の裏側を説明した。

 昨年末、横浜FCから戦力外通告を受けた。「まだやりきっていない」と、故郷島根の隣県からJ入りを目指す鳥取に移籍した。W杯経験者では異例のJFL。ケガに悩まされながらも、主将として17試合に出場した。しかし、勝てばJ昇格の4位以内が決まる最終節で痛恨の黒星。過去2ケタ順位のみのチームを5位に躍進させたが、夢はかなわなかった。「本当はJに昇格させて辞めようと思っていた。でも、これも自分らしくていいかなと」。

 個性的なスターぞろいのJ創設期から、地味に活躍してきた。カズ(三浦)や中山ら超人気選手、ジーコ、リトバルスキーら世界的な名選手を止めた。空中戦の強さは抜群で、J1で29ゴール。横浜M時代の96年には広島戦でハットトリックにオウンゴールと、3-1の全得点を挙げる珍記録もつくった。93年W杯1次予選で代表入りし、98年W杯フランス大会にも出場した。

 93年のJ元年にリーグ戦に出場し、今季もプレーを続けていたのは横浜FCのFWカズと小村、藤吉(JFL北九州)ぐらい。98年W杯組も森島、名波が引退を発表した。「地味でも、この年齢までできたのは胸を張れる」と、17年間のプロサッカー人生を振り返った。今後は解説などの仕事をしながら、S級ライセンス取得を目指す。J1、J2、JFL、5チームを渡り歩いてきた鉄人「オム」が、第2の人生のスタートを切る。