日本トップクラスの代理人が、職業への理解を求めるため、極秘にしてきた交渉現場の現実や業務内容を初めて明かすことを決意した。中村俊輔(32)長友佑都(24)ら多くの日本代表選手の海外移籍を手掛けたロベルト佃氏(40)の著書「サッカー代理人」(日本文芸社)が今日27日に発売される。日本人選手の海外移籍が活発となり、代理人の存在も注目されている。同氏はメディア露出を避けてきたが、実態を正確に伝える必要性を感じており、異例の著書の出版に踏み切った。

 サッカービジネスの“パンドラの箱”が開く。ロベルト佃氏は、横浜MF中村の欧州移籍を皮切りに、ウォルフスブルクMF長谷部誠(27)レスターMF阿部勇樹(29)シュツットガルトFW岡崎慎司(25)インテルDF長友ら日本代表クラスの海外移籍を実現させてきた敏腕代理人だ。移籍成立のたびに取材依頼が殺到するが「代理人は基本的に裏方」という考えなどから、メディア露出は避けてきた。そんな同氏が、本来は隠しておきたい手の内をあえてさらけ出すことを決めたのは、虚像が先行している「代理人」に対する先入観の払拭(ふっしょく)だった。

 移籍交渉が報じられるたび、仕事内容は個々で異なるはずが、憶測などによって代理人に対する偏ったイメージが伝えられていると感じることがあった。昨年夏、スポーツ関連本を手掛けてきた出版関係者から、代理人の「仕事」に焦点をあてた著書出版の依頼が届いた。当初は断ったが、誤解を解き、実態を正確に伝える機会につながると考え、出版に踏み切った。

 「サッカー代理人」の中では、ノウハウを明かすことで生じる仕事上のマイナス面に目をつぶり、舞台裏を明かす。長友がインテルミラノに移籍した際、交渉最終段階まで移籍先のクラブ名を本人に伝えず、明かした後の反応で意志や決意を確認したことなど、同氏ならではの手腕を明かしている。交渉現場の現実や移籍に向けた戦略、交渉術など、本来は隠しておきたい“企業秘密”にいくつも踏み込んでいる。同氏が職業への理解を求めようとする強い姿勢がうかがえる。水面下で動くことで知られる代理人が、手の内を明かす異例の試みは、サッカー界にとどまらず、幅広い分野から反響を呼びそうだ。

 ◆ロベルト佃(つくだ)1971年5月11日、アルゼンチン生まれ。日系3世。企業の同時通訳などとして活動後、95年に横浜マリノスの通訳として来日。同クラブ退社後、01年にマネジメント会社「スポーツコンサルティングジャパン」を設立。03年にFIFA(国際サッカー連盟)公認代理人となり、中村俊輔らの海外移籍を実現させてきた。