「守ってはダメだ!」 12年ロンドン五輪監督の関塚隆氏(62)が、日本代表にエールを送った。10年前、日本は1次リーグ初戦で優勝候補のスペインから下馬評を覆す1-0勝利。日本が臨んだFIFA公式大会で唯一スペインから白星を奪った経験をもとに「パスサッカーの元を断て」と説いた。森保一監督就任時の日本協会技術委員長は「勝って欲しい。今のチームなら可能だ」と期待した。

歴史に残る「グラスゴーの奇跡」だった。10年W杯南アフリカ大会を制し、ロンドン五輪直前の欧州選手権で連覇を達成したスペイン。日本は吉田らA代表の主力が加わったが、相手は「史上最強」ともいわれ、優勝候補の本命だった。

関塚 本気で金メダルを狙ってきていた。ただ、選手たちは誰もビビっていなかった。今ほど海外組はいなかったけれど、ボルシアMGでブンデスリーガデビューもしていた大津が刺激になった。臆することなく試合に臨めたと思う。

スペインはパスサッカー。当時は今ほどハイプレスが一般的ではなく、スペインに対して引いてブロックで守るチームが多かった。しかし、関塚監督は引くことをせず、前からのプレスを徹底させた。

関塚 引いて守っても、回されたら崩されるのは分かっていた。テーマは、ビルドアップ(攻撃の組み立て)するところを抑えること。2人のセンターバックへのプレスがはまった。

前半34分にFW大津がCKから先制ゴールを決めた。1点リードしても守りに入らず、さらに前からプレスをかけ続けた。同41分には快足FW永井を止めようとした相手DFが退場。数的有利になってもゲームプランは変えず。前線からの守備で勝利した。

関塚 4局面(攻め、守り、攻めから守り、守りから攻め)で何をするか、どう動くかは徹底していた。それを、選手たちは90分間やってくれた。今回もしっかりプランを持って臨むこと。プランAだけでなく、B、Cと。今の選手は賢いし、戦えると思う。

スペインに勝った日本は1次リーグを首位突破し、決勝トーナメント(T)の準々決勝も快勝。準決勝でメキシコに敗れ、3位決定戦で韓国に敗れて34年ぶりのメダル獲得を逃したが、当時の経験は生きている。

関塚 吉田、酒井、権田は当時のメンバー。スペインにもアルバやコケらがいる。その経験が今回も生きれば。それに、久保らスペインの強さも弱さも知っている選手もいる。1次リーグと決勝Tは違う。決勝Tで勝つ経験をするためにも、日本代表に頑張って欲しい。

関塚氏は、森保ジャパンに期待を込めて言った。

◆関塚隆(せきづか・たかし)1960年(昭35)10月26日、千葉県生まれ。千葉・八千代高-早大-本田技研でFWとして活躍。91年の引退後は指導者に。磐田、千葉の監督も務め、18年から日本協会技術委員長、ナショナルチーム・ダイレクター。現在はイドゥアーノFC横浜(神奈川県1部)テクニカルアドバイザー、解説者。

◆ロンドン五輪男子サッカーVTR 日本は1次リーグで強豪スペイン、モロッコ、ホンジュラスと同組となった。初戦のスペイン戦をFW大津のゴールで1-0で制して勢いに乗り、2勝1分けで1次リーグを首位通過。準々決勝はエジプトに3-0で快勝し、68年メキシコ五輪以来の4強入りを果たした。準決勝はメキシコに1-3で敗れ、メダル獲得は3位決定戦に持ち越し。韓国とのライバル対決は前半38分の失点から立て直せず、後半12分に追加点を奪われ0-2で敗れ、44年ぶりのメダルを逃した。