【ドーハ(カタール)13日=磯綾乃】メッシが悲願の優勝へ王手をかけた。

アルゼンチン(FIFAランキング3位)が前回準優勝のクロアチア(同12位)に3-0で勝ち、36年ぶりの頂点へ、決勝に進んだ。エースFWリオネル・メッシ(35=パリ・サンジェルマン)が1ゴール1アシストと躍動。数々の栄冠を手にしてきたスターが、これまで唯一届かなかったとされるW杯優勝。あと1勝まできた。

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大歓声に包まれたメッシは、息を切らしながら満足そうに目尻を下げた。目の前にはサポーターと同じように、ずっと跳びはねる仲間たちがいた。「疲れていたけど、チームは再び力を取り戻し、力強い試合をした」。頂点へ近づいた喜びが疲れを忘れさせた。

前半34分。FWアルバレスが得たPKを冷静かつ豪快に決めた。日本戦のPKも含め今大会何度も止めてきた相手GKが飛んでも届かない右上へ。完璧なコース、スピードで鮮やかに突き刺した。これでバティストゥータを抜いて、アルゼンチン歴代単独1位となるW杯通算11得点。輝かしいキャリアに、また新たな称号が加わった。

「毎試合最高の状態で臨むことができて、気分がいいよ」。そう振り返る10番の真骨頂は、2-0の後半24分。ドリブルで一気に右サイド奥深くまで侵入。しつこくマークにつく屈強なDFグバルディオル、こちらも日本が苦しんだDFを、華麗な身のこなしと緩急で翻弄(ほんろう)。1度、2度と振り切ると、最後、その股を抜いて中央のFWアルバレスへパス。右足で流し込むだけの完璧なアシストだった。

3-0での完勝。圧倒的な力を見せつけたが、初戦は痛すぎる黒星だった。国際Aマッチ36試合連続無敗で迎えた今大会。1次リーグ初戦のサウジアラビア戦でまさかの逆転負けを喫した。「最初の試合は、私たちにとって大きな打撃だった。長い間無敗だったから」。そこから5連勝。「その後、すべての試合が“決勝”になって、私たちは5回全てで勝つことが出来た。とても楽しんでいるよ。このチームは再び強さを証明した」。追い込まれ本来の姿を取り戻した。

ここまで5ゴールで、得点王も狙える位置にいる。決勝のピッチに立つとW杯出場26試合目となり、マテウス(ドイツ)を抜いて史上最多に躍り出る。華やかな経歴に次々と加わる新たな記録。そして唯一、足りないとされるタイトルが手の届くところまで来た。「本当にエキサイティングな気分だ。決勝にたどり着いた」。「最後のW杯」と口にして臨んでいる今大会。準優勝だった14年ブラジル大会以来のファイナル。トロフィーを手にするまで、あと1勝だ。