ブラジルは攻守にスキがなかった。

 2ゴールはブラジルらしい個のドリブルを使った攻撃からだったが、その得点は守備意識の高さから生まれたものだと思う。ネイマールを始め、ガブリエルジェズス、ビリアンらFWは前へ仕掛けるプレーが特長だが、ボールを奪われたらすぐにプレスバックして奪い返し、そこから再び攻撃につなげていた。

 また、ネイマールがボールロストした場面でもMFカゼミロがリスク管理をしっかりしてカバーに入る。引いて守る時も全員が崩れずに連動していた。カウンターからピンチに陥れば、DFチアゴシウバ、ミランダらの遅らせる守備も光った。そんなリスク管理ができているからこそ、前の選手は思い切った攻撃ができていた。

 私も浦和レッズにいた若い頃、積極的にドリブルで前へと仕掛けた。4-4-2でサイドアタッカーとして起用された時は、サイドバックの選手から「思い切り前へ行け」と声をかけてもらった。安心して前へ仕掛けられる状況にあった。

 ブラジルはネイマールを始め、1次リーグよりも個々のコンディションが上がっている。加えてネイマールだけでなく、攻撃の選手は誰も個の能力が高く、ゴールに向かえる。どこを抑えたら? というほどドリブルがすごい。スペースと時間を与えてしまうと止められない。もうズルいというしかない。

 メキシコにしてもチャンスはあった。カウンターから3対2という数的優位な場面があった。ドリブルで持ち上がったMFガジャルドがペナルティーエリア外からシュートを放ち、枠を外した。積極的にゴールを狙う意識は評価される部分でもあるが、フリーで動いている選手が2人いたし、確率論からすればそっちを使う手はあった。1次リーグで前回王者ドイツを倒したように、アタッキングサードでの冷静さがあれば、結果も少し違ったと思う。

 守備が整理された上に、持ち前の攻撃力ががっちりかみ合い、チームとして完成しているブラジル。あらためて「サッカー王国」の強さを感じた。

 (永井雄一郎=プロサッカー選手、元日本代表)