攻撃力のベルギーに対し、フランスの適応力が勝った。

 ベルギーは1トップのルカク、トップ下にフェライニ、右MFにデブルイネ、左MFにE・アザールを配置し、序盤からボールポゼッションでピッチを広げ、相手選手がスライドしきれないところを突いて1対1の勝負で局面を打開したり、ルカクやフェライニの高さを生かすクロスボールで崩しにかかったが、それに対しフランスはブロックをつくり我慢して守った。

 前半22分、CKのこぼれ球からベルギーDFアルデルウェイレルトに振り向きざま強烈なシュートを打たれたが、GKロリスがファインセーブ。決定的なシュートを防いだ。また、アザールがドリブルからゴール前へ切れ込んでのシュートはDFバランがブロックした。前半は攻め込まれながらもゴールを割らせず、しっかりゼロで封じた。ブラジルの二の舞とはならなかったことが、後半6分の決勝点につながった。

 フランスの強さは何か? と考えたところ、チームの万能性にあると思う。攻守のキーマン、MFポグバが攻撃時ベルギーMFフェライニに徹底的にマークされ低い位置でプレーすることが多くなかなか良い形で前を向かせてもらえなかったが、ボランチで守備的イメージの強いカンテが代わりにドリブルで前へ運び、縦パスで攻撃のリズムをつくった。前線のFWジル-、トップ下のグリーズマンは積極的に帰陣し、守りで体を張った。一貫して守備意識の高さが光った。決勝点につながるCKを奪った場面では、左MFマチュイディがベルギーのセンターバックの脇にできるスペースに流れてプレーしたことが起点となった。攻守にわたり要所での各選手の素晴らしい判断があった。

 個々の能力で言えば、ベルギーが上回っていたと思う。1対1での局面打開や球際のデュエル。だがフランスはチームとしての組織力、完成度の高さで勝ち抜き、決勝へ進むことになった。前半にアザールが自陣でドリブルに入った時3人で囲み4人めでボールを奪ったシーンはまさに組織力の高さを感じた。

 前回大会を見ると、優勝したドイツには際立った攻撃力があった。しっかりとボールを動かし相手を崩すことが出来たし、高い位置でプレスをかけボールを奪い一気に相手ゴールへ向かうという戦い方も出来た。今大会で言えば、ボールポゼッションに優れたチームが多く、それに対抗してブロックをつくり、しっかり守り切ることが一つのポイントとなっている。ここまで着実に勝ち上がってきたフランスは、守備力をベースに全員がしっかり戦術を理解して戦っている。また、90分を通じて前線の選手が引いて守備をすることでカウンターの時にFWエムバペのスピードを生かせるという計算もあるだろう。

 ノックアウト方式の決勝トーナメントは堅い試合となりがちだが、一方でアルゼンチンに4-3と派手に打ち勝ってもいる。フランスの適応力に、他にはない強さを見た。(永井雄一郎=プロサッカー選手、元日本代表)