4年に1回、ワクワクが止まらない。いよいよ14日から、W杯の1カ月が始まる。ドイツの連覇か、ブラジルが前回大会の雪辱を果たすのか、それともフランスが若い力で頂点に立つのか。そして、新たなスーパースターの座に就くのは誰なのか…。それを考えるだけでも、気持ちは踊る。

 初めてW杯に夢中になったのは、74年西ドイツ大会だった。クライフやベッケンバウアーのプレーから、その国の文化や歴史があふれた。78年アルゼンチン大会では決勝会場に舞う紙吹雪に興奮し、82年スペイン大会は現地で大会の大きさに衝撃を受けた。「仕事としてW杯を見たい」と決めてから、4年周期で生活してきたと思う。

 90年イタリア大会を取材した時には「何で、日本人が来てるんだ」と出場国の記者に言われた。プレスルームで疎外感を味わいながらも「一度でいいからW杯で日本代表を取材したい」と思った。ドーハの悲劇を経て、ジョホールバル。98年大会以降、日本は出場を続けている。夢のような時代になったものだ。

 過去の日刊スポーツW杯報道を見返してみた。初めて記者が派遣されたのは70年大会だった。まだW杯が何なのかも分からなかった時代だったが、ブラジルの優勝は3面で大きく報じられていた。谷口博記者の決勝原稿の最後には「これがエベレストの頂点を争う試合だとしたら、日本はまだカトマンズあたりで登山準備をしているにすぎない」とあった。

 その後、準備を整えるまでに30年近くかかった。以来4年ごとにアタックしているが、何とか五合目まで上がるのがやっと。まだ頂上は見えていない。今回も決して、視界が良好とはいえない。それでも、そこに山はある。アタックを続けていれば、視界が一気に開けることもある。誰が、どう登るのか。それを考えられることが幸せだ。

 仮に日本が途中で下山しても、決勝戦まで登頂争いは続く。世界中が、サッカーを丸ごと楽しむW杯。今回も時差の関係で深夜のテレビ放送が続く。寝不足は覚悟の上。ワクワク、ドキドキの1カ月が始まる。【荻島弘一】