メッシのゴールは超絶だった。左太ももでコントロールし、落ちてきたボールを左足のつま先で前方に落とし、走り込んで「右足」でシュート。トップスピードのまま一連の動作でやりきった。高い技術のスーパーゴール。「メッシ復活」と世界が思ったはずだ。
10代でのW杯初ゴール以来、20代、30代でもゴールしたのは史上初だという。4大会出場で通算6得点。選手として素晴らしいのは、間違いない。前回大会は4ゴールでMVPにも輝いた。それでも、マラドーナと違って、メッシは「W杯では活躍できない」と評価されてきた。
優勝がないからだ。バルセロナでは数々のタイトルを獲得し、バロンドールにも5回輝いた。2位も5回で過去10年間の「連対率」は100%。それなのにW杯、南米選手権での優勝がないから「代表では輝けない」となったのだろう。
今大会も、ここまでは悲惨だった。PKまで失敗した。だから、この日のゴールで「メッシ復活」「W杯史上に残るゴール」と騒がれる。ただ、実際には完調には遠く、後半はパスミスを連発。1度は追いつかれた相手を何とか振り切ったが、アルゼンチンは強くない。前戦より上向いたが、決勝トーナメントを勝ち上がれるとは思えない。
それでも、勝ち進む不安(アルゼンチンファンには悪いけれど)はある。90年イタリア大会、勝ち点4で1次リーグを突破したマラドーナたちは、得意のラフプレーとPK戦で決勝まで進んだ。途中、カレカのブラジルに1-0、ストイコビッチのユーゴスラビアとバッジョのイタリアにPK戦勝ち。世界中が「望まない」勝ち上がりだった。
決勝戦は出場停止者が多く、内容も低調。西ドイツに1-0で破れたが「史上最低の決勝」と言われている。確かに2回優勝はしているが、78年アルゼンチン大会は「八百長疑惑」絡みだし、86年メキシコ大会は「神の手」があった。準優勝3回も、トータルで見れば大した成績でもない。やはり、アルゼンチンはW杯の「嫌われ者」なのだ。
W杯で活躍してきたメッシのイメージもない。6ゴールはすべて1次リーグ。うち3点はナイジェリア相手で、強豪相手には0点。この日のゴールは確かによかったけれど、負ければ終わりの決勝T(この日の試合も負ければ終わりだったけれど)で決めるゴールとは、その価値が違う。
決勝トーナメント1回戦は対フランス。優勝候補との試合で、メッシの真価が問われる。勝ち上がって優勝につながるような素晴らしい得点をすれば、それこそが「今大会のベストゴール」になるはずだ。メッシにとってのゴールは「優勝」しかないのだから。

- 決勝トーナメント進出を決めガッツポーズするメッシ(撮影・PIKO)





