日本の史上初のW杯8強入りはならなかった。ロシア大会の決勝トーナメント1回戦で強豪ベルギーに2-0から逆転負け。2-2の後半ロスタイムにカウンターから失点し力尽きた。4月に急きょ就任した西野朗監督(63)の思い切った采配もあり、大方の予想を覆す戦いで8強入りに手をかけたが、世界の壁は厚かった。あと1歩。この悔しさと手ごたえが、4年後のW杯カタール大会へと継承され、いつか財産となる。日本代表は5日に帰国する見込み。

 西野監督の目は真っ赤だった。試合後は現実がすんなりと受け入れられなかった。「結果については残念のひと言。追い詰めましたけど、やはり勝ちきれない。(差は)わずかであって、わずかでないのかもしれない」。頭の中でまだ戦い、自問自答していた。

 赤い悪魔ベルギーに、ほぼラストプレーでねじ伏せられた。史上初のW杯8強-。そんな希望のともしびは、後半49分、FIFAランキング3位の強豪の強烈なカウンターで消え、選手はピッチに崩れ落ちた。

 原口と乾が決め、2点を先制した。行ける-。その裏で、ベルギーに火がついた。「そこでベルギーが本気になってしまった」と指揮官は言う。追い込まれてもなお、本気で勝ちにくるベルギーと、希望だけを頼りに未踏の領域、ベスト8に手を掛けた日本。これほど有利な展開でも勝てないのか。手を掛けた16強の壁は、なおも高かった。

 西野監督はあのドーハの悲劇をアシスタントコーチ(分析担当)で、マイアミの奇跡を監督で、その場に立ち会ってきた。“ロストフの悲劇”。それは大会前のネガティブな予想を覆し、かつてないほどたくましく戦った、日本の成長があったから。ポーランド戦で物議をかもした敗戦を受け入れ他力で突破を目指す戦いの分も、ベルギー戦は躍動できた。

 「選手は100%以上、戦ってくれた。されど、そのわずかというところは、これからサッカー界でまた埋め直さなければいけないと思います。4年後に、今大会のチャレンジが成功といえるようなサッカー界にしてほしい」

 セットプレー絡みの失点への対処、日常的に、この日のベルギーのような個の力を持つ相手と戦える海外に身を置くことの大切さなど、一朝一夕では解決できない課題も。世代交代も急務だ。戦い方にしても、最後はペースダウンさせ、延長に持ち込むしたたかさがあっても良かった。

 ただ、最後は攻撃的な西野監督の信念が乗り移って、チームは勝ちにいったのだろう。躍進のベースはその姿勢にあった。たらればは、言いたくない。「ゲームに対するコントロールが自分としてどうかを問いたい。2-0というアドバンテージをもらってひっくり返されている。選手たちの非ではなく、ベンチワーク。私の、自分に対する采配に問うところであります」。西野監督は、こうすべてを引き取ってロシアでの挑戦を終えた。【八反誠】