2戦連続でPK戦にもつれ込んだクロアチアは、再びGKスバシッチが勝利の立役者になった。1人目のキックを止め、流れを引き寄せた。軽く浮かしてきた球に対し、右に倒れながらも左手ではじいた。足が痛くて思い切り跳べなかった「けがの功名」だったかもしれない。

 後半43分に右太もも裏を痛めて倒れた。芝をたたいてもん絶。延長に入る前、既に控えGKが準備していたが、「交代したくなかった」。マッサージを受けて強行出場した。すぐにDFブルサリコが負傷交代し、交代枠もなくなった。最後までゴール前に立ち続けるしかなかった。

 足は引きずり気味、ゴールキックはDFロブレンに任せるほどだ。それでも好セーブを見せた。延長前半終了間際には球をキャッチして倒れ、またもん絶。だが、同後半前の円陣では、最前列で手ぶり身ぶりを入れて仲間を鼓舞した。

 亡き友への思いがスバシッチを支えていた。クロアチアのNKザダル所属時代の08年、試合中にチームメートのチュスティッチ選手が自らが蹴ったゴールキックを追ってピッチ横の壁に激突。24歳で亡くなった。デンマーク戦後、故人の写真と「永遠に」の文字が印刷されたシャツを着たスバシッチの姿が、母国で大きく取り上げられた。

 デンマーク戦の3本と合わせ通算4本のPKを止めたのはワールドカップ(W杯)史上最多。クロアチアとしては初出場で3位となった98年以来の4強入りだ。準決勝でイングランドに勝てばボバンら「98年組」を超える。「決勝まで進み、相手がフランスなら最高だ」。現在モナコ(フランス)でゴールを守る33歳は青写真を描いた。

 ◆2試合連続PK戦勝利 クロアチアが決勝トーナメント1回戦デンマーク戦に続いて2試合連続PK戦勝ち。W杯で2試合連続のPK勝ちは90年大会のアルゼンチン以来2度目。GKスバシッチは、デンマーク戦で3本をセーブし、1度のPK戦での最多記録に並んだが、今回のロシア戦でも1本をセーブ。W杯のPK戦で通算4本を止めたのは、82~86年のシューマッハー(西ドイツ)と90年のゴイコチェア(アルゼンチン)に次いで史上3人目。