前半は緊張感たっぷりの斬り合いで、一瞬も目が離せなかった。その中心がベルギーのFW、E・アザールだった。左サイドで、フランスDFパバールのマークを削り取るように前へ、そしてゴールへと肉薄。ドリブルでは4人に囲まれ、いかにフランスが恐れていたか一目瞭然だった。

 しかし、先制すると専守防衛にシフトしたフランスに対し、ベルギーのシャープな攻撃は不発に終わった。得点はなかったが、前半の見事な応酬に比べ、後半は凡戦と紙一重の内容だった。マルティネス監督は「フランスはビッグマッチに慣れている」と敗戦を認めた。

 準々決勝までに14得点し、王国ブラジルと真っ正面から攻め合って倒した。攻めて、奪って、勝つ。それが黄金世代の充実期、アザール率いるベルギーの戦い方で、32年ぶりのベスト4は果たし、初の決勝進出は逃した。

 アザールは落胆の色を隠さず言った。「僕はあんなフランス代表の一員として勝つくらいならば、ベルギー代表の一員として負けた方がいい。僕たちのW杯については誇りに思っている。ブラジル戦ですべてを出し尽くしたし、成し遂げたことに満足しなければならない」。

 大会を彩る名場面となった、あのスーパーカウンターで、粘る日本を沈めた。力尽き、座り込む香川に歩み寄り、アザールは手を差し伸べた。香川は顔を上げ、アザールの顔を見て、感謝するように手を握り返した。強国の10番にふさわしいマナーで、チームがいかに戦術的、そして人間的に魅力があるかを、世界が目撃した。過去最高成績は86年大会の4位。3位決定戦は、アザールのベルギーが、攻撃サッカーの威力を世界に披露するラストチャンスになる。