1次リーグ初戦、コロンビア戦を翌日に控えた6月18日。ロシアでは午前2時ごろだった。私が住む大阪から約7000キロ離れた決戦の地サランスクでLINEの着信音が何度も鳴った。大阪府北部で最大震度6弱の地震が発生。奈良や大阪に住んでいる家族の間で安否を確認する連絡だった。無事が分かり、ひとまず安心したが遠く離れた場所で私自身は何もできず余震がないか仕事の合間に携帯電話で頻繁にチェックするだけだった。

 この日の公式会見で西野監督は「大阪を中心とした震災で、関係している選手、非常に動揺している選手がおります。家族、身内や親族が影響を受けた選手がいる」と明かした。選手間にも広がった動揺。被害が大きかった大阪・高槻市出身のGK東口(G大阪)は妻と、6月に生まれたばかりの子を残していたため「家はぐちゃぐちゃ。1歩間違えれば怖かった」とつらそうな表情だった。

 だが、日本は動揺さえもはね返し、コロンビアに勝利した。試合後、再び私の携帯が鳴り続けた。友人から「地震で不安やったけど、元気もらった」「日本代表ありがとう」と続々と連絡が入った。この1勝でどれだけの人の心を救うことができるのか気付かされた。ワールドカップは、サッカーは、スポーツは勇気を届けることができる。当たり前だと思っていたことを、あらためて知らされた。ロシアから伝えることの義務。自身に刻みこんで臨めた大会だった。【小杉舞】