波乱続きの大会をフランスが制した。決勝こそ大量点となったが、美しくパスをつなぐシャンパンサッカーを捨て、正直つまらなくても勝ち切るスタイルで批判もされた。ただ、デシャン監督が信念を持って徹底させたことは間違いない。

 反対に「戦い方」の評価を高めたのが、日本。方向性を決めたのは選手だ。事前合宿を終えてロシア入りした直後、初めて選手だけでミーティングした。攻守に自分たちから仕掛ける姿勢を確認し、長谷部主将が西野監督に申し入れ、承諾を得た。選手が複数の案を出し、西野監督が選ぶ。この構図で16強まで進んだ。

 “2軍”のガーナに0-2で完敗し、ブーイングを浴びた5月30日を思い返せば、ワールドカップ(W杯)では信じられない結果が出た。ただ、この成功体験は長く続かない。選手の話し合いを主導した長谷部、本田は代表引退。世代交代し、今大会で出場なしのリオ・オリンピック世代、選出すらなかった東京世代が軸になる。フランスはポグバと4バック全員がリオ世代、エムバペは東京世代。対して、日本の若手に戦術を決めさせるのか。酷な話だ。

 3大会連続でW杯に出た本田ら5人を筆頭に、経験ある選手でも実際は意見が割れ、最後を西野監督に委ねるしかない現実もあったという。もし結果が出なければ不協和音は響く。かつての「選手対監督」の対立が「選手対選手」になった危険性もあった。このメリット、デメリットを知る人間を次代に残す方策を日本協会は考えているはず。今すぐは酷だが、次期監督にはデシャン監督のように個性を生かしつつ、臆することなく指導できるカリスマ性も必要になる。【木下淳】