イングランド代表の左サイドバックとして78試合に出場し、引退後はマンチェスターCやロンドン五輪英国代表、イングランド代表(暫定監督)を率いたスチュアート・ピアース氏が、なんと53歳で現役復帰することになった。

 英インディペンデント紙(電子版)など複数の英メディアによると、復帰するチームは、グロスタシャー北部シニアリーグ2部(イングランド13部相当)のロングフォード。

 このチーム、まさに英国最弱といえる戦績で、イングランド協会(FA)のホームページによると、15-16年シーズン(29日現在)は19戦19敗で16チーム中、断トツの最下位。得失点差にいたっては、なんと-180という、どうしようもない底辺クラブなのだ。

 それでもピアース氏は現役復帰を前向きにとらえている。「才能のある若手選手たちの夢の手助けができることが楽しみだ。ロッカールームでの自信と、ピッチ上でのパフォーマンスの両方を向上させ、チームがどれくらい上まで行けるか見てみたい」と話したという。

 ピアース氏が加わることにより、周囲からの注目が増えることもチームに良い影響を与えるに違いない。ニック・ドウ監督は「1年前、我々は1人の男性と、その愛犬だけが見守る中で試合をした。スチュアートのデビュー戦には数百人の観客が集まるだろう」と期待する。

 ピアース氏は90年W杯イタリア大会では主力として4強進出に貢献。準決勝・西ドイツ戦ではPK戦で失敗して悔し涙を流したが、イングランドでは今もレジェンド的な存在だ。

 仲間に対しても妥協を許さない、その戦闘的な姿勢から愛称「サイコ(頭がおかしい人)」とも呼ばれる。ロングフォードの選手たちも、もうたるんだプレーはできないかもしれない。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)