子供のあこがれ、サッカー選手にもいろいろなタイプの人間がいる。今回はちょっと残念だった選手と、スポーツ選手とはこうあるべきだと思わされた選手の、両方について書いてみたい。

 まず残念なほう。Bミュンヘンに所属するポルトガル代表MFレナトサンチェス(19)。自身のインスタグラムに分厚い札束を数えている動画を投稿した。これを複数の欧州メディアが取り上げると、炎上状態となった。

 ベンフィカからBミュンヘンに移籍した昨季はブンデスリーガ出場17試合で、先発はわずか6試合。1ゴールも決めることができなかった。

 そんな状況にもかかわらず、にやけ顔で大金を数え、さらにお札に顔をうずめるような悪趣味な動画を投稿すれば、ファンはバカにされたような気分になる。「札束を数えているヒマがあれば練習しろ」と批判が集まるのも当然だ。

 レナトサンチェスはすぐに自身のSNSに謝罪文を掲載。それによると「内輪のジョークのつもりで投稿した」のであって、本人は「決してこの動画のような人間ではない」のだという。

 ただ政治の世界なども同じだと思うが、人前に立つ人間は、自分の言動が多くの人の目にどう映るのか、より客観視できなければならない。まだ19歳。これを良い経験だと思って、ピッチ内外でもっと自分に磨きをかけてほしい。

 一方、スポーツ選手の在り方を示したのが、サンダーランドからボーンマスに移籍したイングランド代表FWジャーメイン・デフォー(34)。

 このオフの間に、サンダーランドの熱狂的なサポーターで、小児がんの一種である神経芽腫と戦っているブラッドリー・ローリーくん(6)の自宅を訪問した。

 もともと病気のことを知ったクラブが、昨年9月にローリーくんをスタジアムに招待。以来、少年はクラブのマスコット的存在となり、あこがれていたデフォーとの交流も始まった。

 今年3月26日にウェンブリー・スタジアムで行われたW杯欧州予選イングランド-リトアニア戦では、ローリーくんが見守る前でデフォーがゴール。見事2-0でイングランドが勝利した。

 だがその後、ローリーくんの病状が悪化。現在はベッドから起き上がることもままならず、英メディアによると数週間の命とも言われている。

 自宅を訪れたデフォーはローリーくんのベッドに一緒に横になり、小さな体を優しく抱きしめた。ローリーくんの母親がSNSに投稿したその写真は、涙が出るほど美しかった。

 筆者はスポーツ選手ではないが、1人の人間として、デフォーのような温かい心を持てればと強く思った。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)