25日に行われたイングランド2部ブリストル-フラム戦で感動的な場面があった。

後半5分、フラムのセルビア代表FWミトロビッチが先制ゴールを決めると、選手たちみんながスタンド最前列へ駆け寄った。そして車いすに座って観戦していたリース・ポーター君(13)と一緒になって得点を喜んだ。

コンゴ代表MFケバノは柵を乗り越えてポーター君を抱き締め、他の選手たちは少年の頭をなでて髪をくしゃくしゃにしてうれしさを分かち合った。

脳性まひを抱えるポーター君だが、フラムの熱心なサポーターで、自身も地元のクラブでGKとしてプレーする。だが英メディアによると、SNSにシュートをセーブしている映像をアップしたところ、数千もの心ないバッシングの言葉を浴びせられてしまった。少年の母ケリーさんによると「お前は障がい者だ、サッカーなんかできない」というものもあったという。

「その週は練習にも行きたくなかった」というポーター君を元気づけようと立ち上がったのがフラムの選手、関係者たち。クラブは公式サイトを一部変更。名鑑のところに他の選手と並べて背番号1のGKとしてポーター君を掲載した。そして「クラブのすべての人間は、リースからとても刺激を受けています」などと声明も発表した。

また、少年が出演したBBCの番組に米国代表DFリームをサプライズ登場させた。泣きだしてしまうほど感動したポーター君はその後、クラブの練習に参加する機会も得て、ガッサニーガ、ロダーク両GKとトレーニングをともにした。

一方、ポーター君自身も悲しみを乗り越えるために動きだした。「(ネットでの暴言は)とても悲しかったけど、それを乗り越えて、ポジティブな経験にしようと思ったんだ」と、インターネットのチャリティーサイトで募金を開始。障がいのある同じような境遇の人々のために、1万8000ポンド(約276万円)以上のお金を集めた。

セルビア・ミトロビッチ(右)(AP)
セルビア・ミトロビッチ(右)(AP)

スポーツ選手の影響力は大きい。だからこそ、ただプレーを見せるだけではなく、社会的な役割、責任が求められるのだと思う。つらい思いをした少年だが、フラムの選手たちとの交流によって元気を取り戻し、自ら社会貢献活動も始めた。両者が前向きな力を与え合う、とても素晴らしい出来事だったと思う。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)

ボールをセーブしたコスタリカのGKナバス(下)(共同)
ボールをセーブしたコスタリカのGKナバス(下)(共同)