先日、フランス生まれのアルジェリア代表FWアンディ・ドゥロール(30=ニース)が代表活動を1年間辞退したいと表明した。

これにアルジェリア代表のジャメル・ベルマディ監督(45)が激怒。ドゥロールからの連絡がスマートフォンのメッセージで送られてきたということも指揮官の怒りに拍車をかけた。

同監督は「4、5日前、『所属クラブと(代表でプレーしないことで)合意した』というメッセージが送られてきた。彼はクラブで成功したいということで、代表への選出を1年間保留したいそうだ」と説明。

指揮官はその後、ドゥロールと話し合ったことも明かし「このような決断をメッセージで送るべきではない。彼にはそう指摘した。激しい議論になったよ。でも両手を広げて受け入れてくれている国に対し、こんなやり方をするべきではない」と話した。

ドゥロールは今夏、モンペリエからニースへ移籍。現在フランス1部3位の同クラブを勝たせたいという気持ちが強く、「自分は1つのことにすべてをささげるタイプの人間。いつも100%でプレーしてきた。この(代表に参加しないという)決断は自分にとってとても重要なもの。深く考えた末の決断だ」と説明。その上で「代表から引退するというわけではない」と付け加えた。

日本でも最近、特に育成年代の若いサッカー選手の間で、代表チームより欧州ビッグクラブでの活躍を夢見る選手が増えているように思う。これまでであれば将来の夢は「ワールドカップ(W杯)で優勝したい」という子供が圧倒的に多かったが、今は「欧州チャンピオンズリーグ(CL)で優勝したい」と話す子供が増えている。

考えてみればメジャースポーツの中で、欧州を本場とするサッカーとラグビーでは代表チームが重要視されるが、野球やバスケットボールなど米国発祥のスポーツでは必ずしもそうではない。例えば野球にはWBCや五輪、プレミア12など、代表チームで戦う機会があるが、大リーグがシーズンを優先して選手派遣を拒否する場合もあり、各国代表が“最強メンバー”かというと厳密にはそうは言えない。

バスケットボールでも、特に米国代表については真のベストメンバーかどうか疑問が残る。五輪などの世界大会に参加する同国代表にはNBAのスーパースターたちが名を連ねるが、一方で毎回のように辞退者や参加拒否選手が出るからだ。

筆者は学生時代に野球部に所属し、米国流スポーツ文化に浸ってきた。だから以前は、名誉のために代表でプレーするというサッカー界の考え方がいまひとつ理解できないでいた。クラブで活躍して大金を稼ぐことの方が、プロスポーツ選手として当然の姿なのではないかと思っていた。

今では代表が重視されるサッカー文化も理解できるが、一方で今後ますます代表よりもクラブでの活躍に魅力を感じる選手が多くなっていくだろう、とも思っている。

2-2で引き分けた3日のプレミアリーグ・リバプール-マンチェスター・シティー戦は本当に素晴らしい、手に汗握る戦いだった。サッカーのレベルという観点からすれば、毎日同じメンバーで戦術を落とし込んで練習しているクラブ同士の戦いの方が、レベルが高いのは否めない。代表のユニホームより、リバプールやマンCのユニホームを着てピッチで躍動するのを夢見る子供が増えるのは、自然の流れのように思える。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)