昨年夏、レアル・マドリードからマジョルカに期限付き移籍をした久保建英(18)について今回、スペインのラジオ局カデナ・セルでマジョルカの番記者を務めるアルベルト・エルナンド氏へのインタビューを実施した。

今季ここまで、リーグ戦24試合(先発13試合)に出場して3得点2アシストを記録し、286分に1度得点に直接絡んでいる久保について、日々マジョルカを追う番記者はどのように見ているのか?

久保のベストゲームについてアルベルト記者は「それは間違いなく3-1で勝利したソン・モッシュでのビリャレアル戦(19年11月10日)だ」と即答した。

続けて「ベニート・ビジャマリンでのベティス戦もそれに近いレベルの試合をやったのは確かだけどね。でもビリャレアル戦は全てにおいて決定的だった。右サイドを主戦場に素晴らしいパフォーマンスを見せ、ラゴ・ジュニオルの先制点のPKを誘発した。その後1点差に詰められ、マジョルカは苦しめられたが、タケ・クボがマジョルカに安らぎを与え、勝ち点3をもたらす決定的なゴールをペナルティーエリア外から記録したんだ。間違いなく彼にとってビリャレアル戦がマジョルカでのベストゲームだよ」と、久保のマジョルカ初得点が衝撃的であったことを語った。

さらに、「ビリャレアル戦はビセンテ・モレノ監督に、タケ・クボを途中出場させるよりも“先発にふさわしい”という選択を迫る試合にもなった」と付け加えた。実際、久保は監督の大きな信頼を得て、1つ前のバリャドリード戦から20年最初のグラナダ戦まで、リーグ戦8試合連続で先発出場している。

この日の久保のパフォーマンスはスペイン国内でもセンセーショナルに取り上げられた。スポーツ紙最多販売部数を誇るマルカ紙は久保に最高評価の3点を付け、バルセロナのメッシ、Rマドリードのアザール、ベンゼマ、バルベルデ、バレンシアのパレホなど、ラ・リーガを代表するスター選手たちとともに第13節のベストイレブンに選出。“Take Kubo”がスペインで広く認められた瞬間となった。

ターニングポイントとなったビリャレアル戦から約5カ月が経過し、新型コロナウイルスの影響によりサッカー界が激変した今現在、久保の将来についてスペイン国内でさまざまな臆測が飛び交っている。

アルベルト記者は、「レアル・マドリード復帰やマジョルカでのプレー継続などのさまざまな報道が出ているが、それは全て仮定のシナリオだ。またリーグ戦がどうなるかも分からないしね」と語りつつ、「マジョルカが来季1部に残留した場合、タケ・クボにとってのベストな選択肢は間違いなく、このまま同じチームでプレーを継続することだ」との見解を述べた。

来季もマジョルカを推す理由として「彼は選手として成長し続けるためにも、皆にリスペクトされ、やりがいがあり、がむしゃらに戦う必要のあるマジョルカのようなチームに所属するべきだ。選手は限られた状況下でのみ大きく成長することができるし、特に自分を主役だと感じなければいけない。彼は試合を重ねて磨かれる必要のあるダイヤモンドの原石だ。まだ18歳なので、継続して多くの試合に出場し、たくさんの経験を積まなければいけない」と出場時間の重要性を説いた。

「Rマドリードのようなビッグクラブが彼にとって大きなチャンスなのは間違いない。しかし、それは世界のスター選手たちとのポジション争いを余儀なくされることになる。また、中堅クラブは彼がプレーするのに向いているかもしれないが、出場時間を考えるとやはり、タケ・クボにとっては日々フィットしているマジョルカがベストの選択だ」と言い切った。

久保に対し、周囲のクオリティーが高ければもっと成績を伸ばせるとか、より上のクラブでプレーできるという意見があるかもしれない。しかし欧州でのプロ人生1年目を過ごす18歳の若者にとって、コンスタントに試合に出場できるマジョルカでの経験が大きな財産になるのは間違いないだろう。

全ては新型コロナウイルスの状況次第となるが、現時点では6月上旬にはリーグ戦再開という見通しが立っている。シーズン終了まであと11試合。久保にはまだ来季を決める時間が十二分に残されている。【高橋智行】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)