レアル・マドリードが10月31日にホームで行われたウエスカ戦で、ケガから復帰したFWエデン・アザール（29）のスーパーゴールを皮切りに今季最大得点差となる4－1の快勝を成し遂げた。
Rマドリードは今季、新型コロナウイルスの影響を財政面に大きく受け、収入が2億ユーロ（約250億円）減少すると予想されており、クラブ史上最高額となる3億ユーロ（約375億円）を費やした昨夏と打って変わり、1人も補強しなかった。唯一のニューフェースと言えば、昨季、期限付き移籍でプレーしていたGKルニン、DFオドリオソラ、MFウーデゴールが戻ってきた3選手だけだった。
9月20日に行われた今季最初の公式戦でレアル・ソシエダを相手に0－0で引き分けた後、安定した戦いができず、先週末に行われたウエスカ戦前までの公式戦通算成績は8試合4勝2分け2敗とそこまでいい出来ではなかった。
その原因の1つとして、プレシーズンの準備不足や昨季終盤のような堅固な守備を見せられていないことが挙げられるが、大きな原因は2018年夏のロナウド退団から今なお続く得点力不足に他ならない。
特に引いた相手を攻略するのに苦戦しており、ウエスカ戦前4試合の成績は1勝1分け2敗。カディス、シャフタル・ドネツク相手に連敗し、ジダンの監督解任の可能性が報じられた後、メッシの退団騒動、監督交代などで内部的に問題のあるバルセロナに勝利し、そのうわさを一蹴した。だがボルシアMGとギリギリで引き分けたことで、欧州チャンピオンズリーグではすでにクラブ史上初となるグループリーグ敗退の可能性が浮上している。
今夏、得点力不足解消の起爆剤として、パリ・サンジェルマンのフランス代表FWエムバペやドルトムントのノルウェー代表FWハーランドを獲得候補に挙げていたとのことだが、クラブの財源に余裕ないこと、そして相手クラブに放出の意図がないことにより、補強プランを来年以降に方向転換したと伝えられている。
Rマドリードには現在、センターフォワードとしてベンゼマ、ヨヴィッチ、マリアーノ・ディアスの3選手がいるものの、後者2名はジダンの戦力に入っていないようだ。
昨季6000万ユーロ（約75億円）で入団したヨヴィッチは今季、ベティス、バリャドリード、シャフタール・ドネツク相手に先発出場するも無得点に終わり、チャンスを生かせなかった。そしてボルシアMG戦でジダンの信頼がないことが顕著になった。交代枠が2枚残り0－2で負けていた試合終盤、ジダンはヨヴィッチを起用するのではなく、センターバックのセルヒオ・ラモスとバランを前線に上げることで対応し、最終的に2－2で引き分け勝ち点1を救い出した。
マリアーノは今夏、クラブの放出候補リストの1人だったが、高額な年俸もネックになり移籍が実現できず、リーグ開幕直前にへんとう炎を患い、手術後に体重を8キロ落としたためリハビリに時間がかかっていた。今季9試合目のウエスカ戦で初めて招集メンバー入りしたが、現時点ではジダンの戦力には見られてない。
そして今冬の移籍市場で引き続きRマドリードは補強を実施する予定がない一方、ヨヴィッチやマリアーノを放出の可能性はあるとのことだ。またベンゼマもウエスカ戦前まで、公式戦8試合でわずか2得点と、そのパフォーマンスが気がかりになっていた。
そんな中、10月31日に行われたウエスカ戦、Rマドリードは前半、いつも通り攻撃でてこずるも、今季初先発を飾ったアザールがスーパーミドルで口火を切ると、ベンゼマ（2得点）とバルベルデもゴールを決め、今季最大得点差となる4－1の圧勝を飾り、最近の悪い雰囲気を吹き飛ばした。
アザールの復帰はRマドリードとジダンにとって、“今季唯一かつ最高の補強”と見られている。その理由は、昨季「新たなロナウド」として1億ユーロ（約125億円）で入団するも、度重なるケガに苦しみ、公式戦22試合の出場でわずか1得点3アシストと期待された成績を残すことができなかったため。チェルシー時代のパフォーマンスを取り戻すことを期待されている。
アザールはウエスカ戦後、次のように語る。
「今日は疲れたが、自分のベストのフットボールを取り戻すため、もっと多くの試合に出場したい。僕たちには2～3日後、非常に重要なゲームを控えているため、準備できている必要がある」
Rマドリードは3日、ホームでインテルミラノとチャンピオンズリーグ・グループリーグ第3節を戦う。現在0勝1分け1敗との勝ち点1でグループ最下位のため、クラブ史上初となるグループリーグ敗退を避けるためにも絶対勝利が必要となる。
ウエスカ戦ではアザールのパフォーマンスに触発され、ベンゼマも調子を取り戻した。2年以上前から得点力不足が取りざたされる中、アザールのパフォーマンスが問題なく今後も継続するかが今季の鍵となる。そしてインテル戦が最初の大きな試金石となるだろう。
【高橋智行通信員】（ニッカンスポーツ・コム／サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」）
