ヨーロッパ中で新型コロナウイルスの感染が再拡大した年末年始のこの時期、スペインリーグでも各クラブで陽性者数が続出している。

12月に入るとスペインでは1日の感染者が10万人を超え、年末には過去最多を更新。この大きな原因として、クリスマス時期の会合や人の大きな動きが挙げられている。この事態を受け、これまでは一定の距離を確保できれば屋外でのマスク着用が免除されていたが、法律により再び義務化され、10月より100%に戻ったばかりのスタジアムの入場者数が75%に制限されるなど、厳しい規制がかけられ始めている。

そんな中、クリスマス休暇を終えた各クラブは、年末よりシーズン後半戦に向けた練習を開始。それに先立ち新型コロナウイルス検査を実施した際に陽性者が続出し、1月4日時点での最多クラブはラリョ・バジェカノで17人だった。

続いてエルチェ13人、バルセロナ12人、レアル・ソシエダード10人、セルタ、アラベス、オサスナは各9人、ベティス6人、レアル・マドリード、セビリア、ビルバオ、エスパニョール、カディスが各5人、アトレチコ・マドリード、マジョルカ、バレンシア、グラナダが4人、レバンテが各3人となっている。

一方、ヘタフェとビリャレアルは検査結果を一切伝えていない。またマジョルカは4人の陽性者の名前を明かしていないが、久保建英は現地メディアに陽性の可能性が報じられ、2日のバルセロナ戦を欠場していた。

マジョルカMF久保建英(20年6月13日)
マジョルカMF久保建英(20年6月13日)

さらにバルセロナのラポルタ会長やAマドリードのシメオネ、ビルバオのマルセリーノ、オサスナのアラサテといった監督なども陽性者になっている。

新型コロナウイルスの状況を公表している全てのクラブから、合計100人以上の陽性者が出ているため、当然ながらリーグ中断を訴える声が挙がっている。中でも2日にマジョルカと対戦したバルセロナは、多数の陽性者に加え、けが人や出場停止などにより計16人が欠場したため、シャビ監督は前日会見で「我々はギリギリの状況だ。リーグ戦の質を落とすことになるので、私は今が試合を中断する適切なタイミングだったと思っている」と強く訴えた。

しかし、スペインリーグが新たに策定した新型コロナウイルスに関するプロトコルによる試合開催条件が、トップチームとBチームの選手合わせてベンチ入りメンバーが最低13人いること、そしてトップチームの選手が最低5人出場することになっているため、各クラブは不安を抱えながらもリーグ戦は通常通り継続されている。

バルセロナの中止を訴える姿勢に対し、マジョルカのルイス・ガルシア監督は「我々はこれまで、スペインリーグの中でも特に欠場者の多いチームだった。一方、バルサは今、あのように欠場者が多い状況に陥っているので中断という話をしているが、まるで自分たちだけが問題を抱えているかのようだ。しかし彼らの控え選手は1部リーグのどのチームでもレギュラーを張れるのだから、欠場者を言い訳になんてしてはダメだ」と皮肉を述べ、辛辣(しんらつ)に批判した。

またリーグ戦延期について、首位を走るレアル・マドリードのアンチェロッティ監督は「多くのチームが影響を受けているし、我々もクリスマス休暇前のビルバオ戦でその影響を受けていた(※9人が陽性で欠場)。プロトコルがあるのでそれに従わなければいけないし、それが変更されないなら我々は試合を続ける必要がある。しかし、パンデミックは今、かなりうまくコントロールされているので、私は試合を続けることができると思っている」と冷静に意見を述べていた。

クリスマス休暇後に陽性者が続出することはある程度予想されていたものの、ここまでの状況となると、各クラブの監督たちが頭を抱え、中断を求めるのは仕方がないことだ。しかしただでさえ過密日程のため、もしリーグ戦を中断した場合、その後のスケジュール調整が非常に難しいと思われる。

スペインでは現在、新型コロナワクチンの3回目の接種が急ピッチで進められている中、この困難な状況を各クラブがどのようにうまく乗り越えるかが、成功を収める大きな鍵となるはずだ。シーズン終了まであと約5カ月、大きな問題なく終われることを願いたい。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)