レアル・マドリードがシーズン開幕から公式戦8連勝と、昨季のスペインリーグおよび欧州チャンピオンズリーグ(CL)の王者らしく、その強さを維持し続けている。

今季のRマドリードは、カゼミーロ、マルセロ、イスコ、ベール、ヨビッチ、マジョラル、久保の7人が退団した一方、リュディガー、チュアメニを新しく補強し、期限付き移籍から復帰したオドリオソラを加え、例年より少ない23人の陣容で臨んでいる。

カゼミロの抜けた穴をチュアメニがうまくカバーし、リュディガーがDFのユーティリティープレーヤーとしてプレーしている以外、昨季との違いはあまりない。エースのベンゼマが負傷中だが、前線ではビニシウス、ロドリゴ、バルベルデが高い決定力を見せ、37歳の誕生日を迎えたばかりのモドリッチに至っては衰えを全く感じさせておらず、チーム全体から調子の良さがうかがえる。

また、クラブ史上初の6冠を目指すアンチェロッティ監督が、11月から12月にかけて開催されるワールドカップを考慮し、シーズン当初からローテーションを実施していることも、チームにとってプラスの要素だろう。イタリア人指揮官はすでに第2GKのルニンと負傷していたオドリオソラ、バジェホ以外の20人を起用している。主力選手を休ませ、控え選手に出番を与えて自信を持たせることで、選手層が厚くなっている。

スペインリーグでまだ一度もクリーンシートを達成できていないことが懸念材料のひとつに挙がるが、後半の爆発力には目を見張るものがある。今季ここまでの公式戦成績は8戦全勝の22得点5失点だが、後半は16得点0失点と攻守にわたり非常に安定したパフォーマンスを発揮している。

Rマドリードの後半の勝負強さは昨季、特に欧州CLでパリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティーを立て続けに撃破した際に証明されていた。運の良さも確かにあっただろうが、この勝利の連鎖についてはフィジカルコーチのアントニオ・ピントゥスの存在が大きく関係している。

昨季終盤までほぼローテーションせず少数精鋭で戦いながらも、大きな問題を抱えることなく、シーズンを通じて良好なフィジカルコンディションを保てたのは、ピントゥスのお陰だと言われている。

ピントゥスがシーズン中に何度か実施したミニキャンプでのトレーニングは細部まで計算されており、オーバーワークはなく、けがを未然に防ぐ効果があったとのこと。これにより例年に比べ故障者が減り、さらに延長戦でもペースを落とすことなく走り続けるスタミナを身につけることができたという。

そのトレーニングで特に目立っていたのは、選手たちが心肺機能を上げ、持久力を高めることを目的とした低酸素マスクを使用したことだ。これを装着し高地での訓練に近い高負荷のフィジカルメニューを行うことで、選手たちの身体はさらに鍛え上げられていった。これにより試合が終わりに近づくにつれ対戦相手をスプリント数で上回っていき、最終的に欧州CL史上最多14回目の優勝を達成したのだった。

アンチェロッティ監督は14日のライプチヒ戦後、「後半、相手のインテンシティが下がったのでフィジカルの強さを生かすことができた」と、今季もフィジカルコンディションが良好であることをアピールしており、今後も後半に爆発力を発揮する試合が多くなりそうだ。

しかしRマドリードはここまで、難敵と言われるほどの相手とはまだ対戦していない。18日にアウェーで行われるスペインリーグ第6節でのアトレチコ・マドリードとのダービーマッチで真価を問われることになりそうだ。ベンゼマの復帰が間に合うかどうかは現時点で不透明だが、今後を占う重要な一戦になることは間違いない。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)