23-24年シーズンのスペインリーグ開幕から1カ月、レアル・マドリードは唯一4連勝を成し遂げているチームとなり、上々のスタートを切っている。この躍進の要因は間違いなく、20歳のイングランド代表MFジュード・ベリンガムが瞬く間にチームの中心選手となったことにある。
■攻撃の軸ビニシウス離脱する中
Rマドリードでは昨季終了後のベンゼマ退団を皮切りに、ヤシン・トロフィーを受賞した世界最高GKクルトワと守備の要ミリトンが今季絶望の可能性もあり得る前十字靭帯(じたい)断裂の重傷を立て続けに負い、さらに攻撃の中心であるビニシウスが1カ月~1カヶ月半の負傷欠場を余儀なくされるなど、大きな問題が立て続けに起こっていた。
そんなチーム状況を救ったのは、今夏スペインリーグの移籍金最高額で加入したばかりのベリンガムだった。アンチェロッティ監督がドルトムント時代から惚れ込み、何度も直接電話して説得にあたり、最終的に2倍の年俸オファーを出していたリバプールやマンチェスター・シティーとの獲得レースを制して獲得したほどの逸材だ。
■4-3-1-2にシステム変更
アンチェロッティ監督は開幕前、生粋のセンターフォワードが期限付き移籍で加入したホセルのみというチーム事情を加味しつつ、ベリンガムの能力を最大限引き出し、チーム全体のパフォーマンスを高めるためひとつの大きな決断を下した。それはイタリア人指揮官がRマドリードでの通算4シーズンで欧州チャンピオンズリーグ2回の優勝を含む計9タイトルをもたらせた4-3-3から、4-3-1-2にシステムを変更するというものだった。
この新たな戦術は今シーズン開幕から見事に的中していく。トップ下に据えたベリンガムを中心に攻撃が活性化されたチームは、ここまでの4試合で欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、ドイツ、イタリア、フランス)でパリ・サンジェルマン、バルセロナ、チェルシー、アーセナルと並び、敵陣でのコンビネーションプレーが最も多いチームとなった。
■開幕4試合連続の5得点トップ
そして総得点は8ゴールとそこまで多くはないものの、シュート数はブライトン(83本)、マルセイユ(77本)に次ぎ、パリ・サンジェルマンと並び欧州5大リーグで3番目に多い75本。これはチームが数多くのチャンスを作っていることを物語るデータとなっている。
これまでよりもゴールに近い位置でプレーしているベリンガムは、開幕から4戦連続で通算5得点を記録する活躍ぶりを見せ、3得点の久保建英(レアル・ソシエダード)、ウィリアン・ジョゼ(ベティス)、モラタ(アトレチコ・マドリード)を抑え、リーグ得点ランキングでトップに立ち、8月のスペインリーグ最優秀選手に選出されていた。
その勢いは代表チームでも止まらず、12日のスコットランド戦でも1得点1アシストを記録。すなわちベリンガムは今季戦った6試合(スペインリーグ4試合、代表2試合)で6得点、1試合平均1得点を挙げているのである。
■得点生み出すハイブリッド型
ベリンガムを”ジダンとベンゼマの能力を合わせ持ったハイブリットな選手”と見なすアンチェロッティ監督はこの状況を受け、「クオリティーという点で驚きはないが、多くのゴールを決めていることは驚きだ」と得点数の多さは予想外であったことを認めつつも、「チームによく適応しており、問題なく15ゴールを決めることができる」とその能力の高さに大きな期待を寄せている。
Rマドリードは攻撃面に関して、開幕からここまでは順調にいっている。しかしベリンガムにとって最大の目的はゴールすることではなく、さらにFW陣の選手層の薄さは否めず、得点力不足に対する懸念は完全に払拭されたわけではない。そのため今後、ゴール面で大きな問題に直面する可能性は大いにあり得る。
この後、来月の国際Aマッチ期間までの3週間でRソシエダード、Aマドリード、ナポリなどの強豪含む公式戦7試合に臨むことになるが、その非常にタイトな日程の中、これまでのパフォーマンスが本物かどうか真価を問われることになるだろう。【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)


