勝手な思い込みだが「無敵艦隊」とは何か縁があるのかもしれない。16年前の南アフリカ大会を取材した時に優勝したのがスペインだった。そして今回、再び取材に出向いている北中米大会でもファイナリストとなった。

勝ち上がり方もどこか似ている。南ア大会は初戦でスイスに0-1と敗れた。その試合も取材したが、イニエスタとシャビを軸に圧倒的にボールを支配し、攻め続けながら得点が奪えず。逆に失点してまさかの黒星スタートとなった。

今回は初戦で初出場のカボベルデが相手だった。さすがに圧勝するだろうと思っていたら、GKボジニャの堅守の前に得点を挙げられず0-0で終えた。優勝候補と呼ばれながら大丈夫かな? と心配したが、そこからは攻守にスキなく確実に勝利を挙げた。

南ア大会でも無失点試合が多く、7試合中5試合が無失点で決勝トーナメントはすべて1-0と手堅かったが、今回はここまで7試合中6試合が無失点勝利となっている。肝は「堅守」なのだ。

また、監督の作り上げた一体感あふれるチームの雰囲気もどこかよく似ている。南ア大会の時は「聖人」と呼ばれたビセンテ・デルボスケ監督だ。温厚な人柄で誰からも愛されていた。

当時、スペインの試合は7試合中6試合を取材した。試合後のミックスゾーンにいると、ニコニコと笑顔のデルボスケ監督がやってくる。すると母国メディアはみんな笑顔で集まり、楽しそうに話し込む。人望の厚さは一目瞭然。チームだけでなくメディアまで巻き込み、一体となって戦っているように見えた。

今回のルイス・デラフエンテ監督もかつての聖人に負けない好々爺(こうこうや)に映る。いつも笑顔が印象的で親しみやすさのオーラがにじみ出ている。

フランス戦後には「我々は世界最高の代表チームの一つと対戦したが、フランスが今日対戦したのは世界最高のチームだった」とコメントした。なかなかの手前みそぶりだが、普段から選手の気持ちを乗せることで、チームの一体感も高めているのだと分かる。その信条は「スペインはひとつの家族」なのだという。

16世紀のスペイン帝国海軍は、さまざまな海戦に打ち勝ち「無敵艦隊」と恐れられた。その船乗りたちは命がけで荒れる海を航海する。同じ釜の飯を食い、互いに手を取り合い、目的を達成しようとする。ゆえに必然的に家族となる。

サッカーでW杯を戦うのも同じ構図なのだと思う。欧州の予選から始まる長い旅路は、多くの嵐を乗り越えてきた分、お互いの距離もグッと近付くだろう。

さてファイナルの舞台。勝者はどこであろうとも、長い旅路を終えた“船乗り”たちに乾杯したい。【佐藤隆志】