今回のワールドカップで初の試みとなった「ハイドレーションブレイク」は大成功ではなかろうか。
前後半の真ん中に挟む飲水タイムだが、選手が休めるのはもちろんのこと、この3分間が楽しめる。音楽が流れたり、特設コーナーではダンスチームが踊ったりと趣向がこらされている。プレーは止まっても気分が途切れることがない。
個人的にはボン・ジョヴィの名曲「Livin' on a Prayer(リビン・オン・ア・プレーヤー)」の懐かしいイントロが始まると、グッと気持ちが高まる。7、8万人規模の会場も曲に合わせて大合唱。その一体感がまた、選手たちの気分を盛り上げ、好プレーを後押ししているように思う。
その「リビン・オン・ア・プレーヤー」は1986年にリリースされた。伝説的な音楽番組「ベストヒットUSA」が大人気だった高校時代、ご多分に漏れず洋楽にはまりアメリカンロックはよく聞いていた。当時は歌詞を深く理解することなく、リズムやメロディー、歌唱力やかっこよさにひかれたが、あらためてその歌詞に踏み込めば気持ちはより強まる。
その内容は、苦しい生活の中で懸命に生きているトミーとジーナが、手を取り合い、明日への希望を持って生きていこうとしている。切なさはなく、あるのは力強さだ。自分を信じて生き抜いていけ、という、聞いているこちらの背中まで押してくれる。
あれからもう40年もたったのか…と過ぎ行く時間の早さをしみじみとかみしめる。それと同時に、どんなに時代が変わってもいい物は消えないという事実をあらためて感じている。
音楽やファッションなどのトレンドは、20年周期で繰り返される傾向にある。一度は廃れたものが、当時を懐かしむ大人世代のノスタルジーと、初見で新鮮に映る若者世代の関心が交錯する。流行の循環ともいうべき「20年ルール」は学術的にも確立されている。
今大会の各代表のユニホームやウェアにも流行の循環が見えた。ドイツは1990年のイタリア大会で優勝した時の雰囲気があるデザインだったし、イングランドも伝統の白を基調としたレトロ風だ。また、日本も移動時に着用したセットアップは青と赤と白が混ざった色彩、かつダボッとした感は90年代に着用していたものと重なる。
時代の変化とは、月を目指して突き進んでいくようなものでなく、イノベーションを繰り返しながら地球の周りをグルグルと周回しているようなものだと思う。温故知新ということだ。
ボン・ジョヴィだけでなく、会場に鳴り響く80~90年代のロック。自分も昔は若かった。人生をふりかえるようなエモーショナルなW杯を体験している。【佐藤隆志】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サカバカ日誌」)



