プレミアリーグ対決となった3回戦、レスターは後半にベンチを出た岡崎慎司(31)の1ゴール1アシストでリバプールを下した。

 前半はリバプールの一方的な展開。相手が週末のリーグ戦先発メンバーから8名を変えて戦力温存を図っても、調整を兼ねて先発したコウチーニョが糸を引く攻撃にレスターはついていけなかった。守勢は覚悟の上だったとしても、貴重なマイボールのキープもままならず、カウンターも形にならないまま攻め込まれる状態が続いた。リバプールが敗れた最大の原因は、前半45分間の圧倒的な優位を得点に変えられなかった詰めの甘さにあった。

 だが、レスターの勝因が後半の岡崎投入だったことは明白だ。リバプールが、別格の存在感を見せていたコウチーニョをハーフタイムで下げた事実も流れが変る一因ではあった。2トップの一角で先発したウジョアの負傷(軽い脳震盪の様子)による急な交代でもあった。しかし、岡崎がピッチに立った53分を境にレスターは変わった。振り回されているだけだった選手たちが、攻守両面で目的意識の感じられるプレーを見せるようになった。試合後のシェークスピア監督も「違いを生んだ」と、岡崎のインパクトを認めている。

 チームのカンフル剤となった岡崎は、いきなりボールを奪い返して駆け上がってみせたように、果敢に守備もこなすFWというお馴染みのプレースタイルで、観衆を含むレスターの仲間たちにエネルギーを与えた。スタジアムの歓声が一気に最高潮に達した66分の先制点も岡崎らしいゴールだった。CK後のセカンドボールをチルウェルが再びボックス内に放り込むと、モーガン、そして今夏にセビージャから移籍した新ボランチのイボラによる落としを経たボールが岡崎の前に。右足でのファーストタッチはやや強すぎた感があるが、手前でブロックを試みるロバートソンよりも一瞬早くシュートに持ち込み、ゴール左下隅に蹴り込んだ。

 その後も岡崎は、自らのプレーで追加点へとチームをつき動かす。自陣深くでカウンターの起点となったかと思えば、中盤でハイボールを競ってFKを奪うなど精力的に動き回っていた。78分にスリマニが左足で豪快に決めた2点目でも、岡崎は持って上がった後のラストパス供給以上の貢献をしている。そもそものきっかけとなったスローインは、タッチライン沿いまでダッシュした岡崎のプレッシングが誘発した敵のパスミスによって得たものだったのだ。相手GKの正面をついてしまったが、84分に狙ったパワーフルなミドルは、この日の岡崎がチームに与えた力と、チームメイトにも乗り移った自信を象徴しているかのようだった。

 レスターは後半45分間で4回戦へと駒を進め、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた岡崎は、40分間弱のパフォーマンスで約1カ月ぶりとなる先発復帰へと近づいた。岡崎がスタメンに名を連ねて然るべきプレミアリーグ6節は、23日に再びホームにリバプールを迎えて行われる。(山中忍通信員)