名門バルセロナに初の日本人選手が誕生する。日本代表MF安部裕葵(ひろき、20)が、鹿島アントラーズからスペイン1部バルセロナに移籍することが12日、正式に発表された。クラブ間基本合意に達しており、現地でのメディカルチェック後に正式契約予定。安部は鹿島のクラブハウスで取材に応じ、移籍決断の理由と、バルセロナでサイドバックを務める可能性に言及した。

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慣れ親しんだ練習着に身を包んだ安部は、やや引き締まった表情で会見に立った。「鹿島アントラーズからFCバルセロナへ、移籍することを決めました」。あのバルサに、日本人が挑戦する。決断の理由を問われると「僕が高校を卒業して鹿島を選んだように、いい環境で自分の人生を歩んでいきたいと思った」と述べた。高校時代は無名の存在。「身の丈にあったクラブ」などとは考えず挑戦的な環境に飛び込み、わずか2年半でバルセロナから求められるまでに成長した、安部らしい答えだ。

バルセロナは昨季終盤から安部の試合をすべてチェックしており、オファーにあたってはコンバートの可能性も示唆してきたという。「DFジョルディ・アルバ、DFダニエウ・アウベスみたいな、あのポジションを(やる可能性がある)。ウインガーは探していない、それ以外を器用にできる選手を探している、と聞いた。(ポジションは)流動的じゃないですか」。これまで攻撃的なポジションで勝負してきたが「バルセロナはサイドバックがすごく高い位置を取る。サイドハーフよりも前を向ける回数は絶対に多い。鹿島のサイドバックを見ても、その重要性を感じていた」と、与えられた可能性をポジティブにとらえた。

移籍金は200万ユーロ(約2億5000万円)で、トップ昇格までの間は年俸25万ユーロ(約3125万円)とみられる。2部Bリーグ(3部リーグ相当)に所属するバルセロナBからのスタートとなるが、トップチームと同じ練習場で日々を過ごすだけでも、得られるものは大きいはずだ。「鹿島に入れていなかったら、おそらく大学生だった。正直、失うものは何もない」。20歳の前には、無限の未来が広がっている。【杉山理紗】

◆安部裕葵(あべ・ひろき)1999年(平11)1月28日生まれ、東京都出身。兄の影響で4歳ごろサッカーを始め、城北アスカFC、本田圭佑のプロデュースするS.T.FCを経て、広島・瀬戸内高へ単身サッカー留学。高3夏の全国総体(8強)で鹿島に見いだされプロ入り。今季から背番号10を任されていた。171センチ、65キロ、血液型O。右利き。