【タイ=杉山理紗】前日本代表監督の西野朗監督(64)率いるタイはオーストラリアに1-2と逆転負けし、大会史上初の決勝トーナメント進出は次戦にお預けとなった。

14日のイラク戦で引き分け以上で突破がほぼ確実。短期間で浸透させた攻撃的サッカーで、同国としては52年ぶりの五輪出場を目指す。

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西野監督率いるタイが、地元で強豪オーストラリアに肉薄した。序盤こそ出足の鋭い相手に苦戦したが、前半10分を過ぎると完全に流れをつかんだ。前線に並べた自慢の攻撃陣が、流動的にポジションを変えながら個人技でゴールに迫り、1つ1つのプレーに会場が熱気を帯びていく。前半24分にDFティタトーンのシュートの跳ね返りをMFアノンがダイレクトで流し込むと、2万2000人が詰めかけたスタジアムのボルテージは最高潮に達した。

チームを率いて1カ月半。「攻撃でチームを作っていきたい。ボールをつなぐ技術は通用する」と、タレントのそろう攻撃陣を生かし、ポゼッションサッカーを志してきた。西野監督は言う。「オフェンスのタレントは、非常に(技術が)高いものを感じる。鋭くスピーディー、技術も高い。ディフェンス力はかなりレベルアップしなくてはいけない。個というよりグループで、距離感を生かしながらやっている」。前半に見せた美しいサッカーは、早くも“西野流”の浸透を感じさせた。

ところが前半終了間際に失点すると、後半は失速した。3日前の初戦から先発は完全固定。「全体的にパワーに対するフィジカルが足りなかった。メンバーを動かさなかったのはあると思う」と、自らの采配を悔やんだ。ピッチ内で試合の流れを読み、ゲームコントロールできる選手がいないのも一因。各国に試合を申し込んでも、タイのレベルでは断られることも少なくないといい、指揮官は「経験値が少ない」と未熟なチームをおもんぱかった。

14日の第3戦でバーレーンがオーストラリアに9点差以上で勝利しない限り、タイはイラクに引き分け以上で史上初の1次リーグ突破が決まる。52年ぶりの五輪出場へ、西野監督の挑戦はまだ終わっていない。