ウクライナのW杯出場の夢が、あと1歩のところでついえた。

ウクライナはアウェーでウェールズに0-1と惜敗し、16年ぶり2度目の本大会出場はならなかった。それでも母国がロシアから軍事侵攻を受け、試合への準備もままならない中、勇敢にプレーしたウクライナの選手たちに対し、会場からは惜しみない拍手が送られた。

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試合終了の笛が鳴ると、ウクライナの選手たちはピッチに崩れ落ちた。それでもその健闘ぶりにスタンドからは大きな拍手が送られた。攻守の要で、プレミアリーグ覇者マンチェスター・シティーに所属するMFジンチェンコは気持ちが落ち着くと「我々の負けは妥当ではないと思う。両チームは競り合っていたから」とした上で「ウェールズのW杯での幸運を祈りたい」と相手にエールを送った。

不運な失点だった。前半34分、相手FWベールの低くて速いFKを、ゴール前のFWヤルモレンコがクリアを試みた。だが頭ではじき返したはずのボールは、無情にもゴールに吸い込まれた。

それ以外はウクライナが押す時間も多かった。ジンチェンコを中心にショートパスをつないで相手守備陣に揺さぶりをかけ、ボール保持率は63%を記録。降りしきる雨の中、一丸となって果敢に攻めた。シュート数は24本(枠内9本)と、相手の10本(枠内2本)を大きく上回った。

敗れはしたが、最前線の兵士をはじめとするウクライナ国民を鼓舞する戦いぶりだったのは間違いない。ジンチェンコは「もし我々がファンに素晴らしい感動を与えられたのであればうれしいし、仕事はできたということだ。チームの全員がピッチですべてを出し切った」と、納得の表情でスタジアムを後にした。

○…ウェールズはGKヘネシーがビッグセーブを連発するなど、体を張って守り抜いた。1958年のスウェーデン大会以来、64年ぶり2度目のW杯出場を決めた。国際サッカー連盟(FIFA)によると、従来は1990年大会のエジプトと94年大会のノルウェーが、それぞれ56年ぶりに出場したのが最長記録だった。エースのベールが放った鋭いFKが相手のオウンゴールを誘った。今季限りでレアル・マドリードを退団。この試合に負ければ引退するのではと報じられていたベールは「引退が先延ばしになった?」との質問に、「少しね」と笑顔で答えた。