全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は16年1月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。21回の最多優勝回数を誇る旭化成が、21世紀初優勝に挑戦する。

 今夏の北京世界陸上には鎧坂哲哉(25)と村山謙太(22)が1万メートルに、村山紘太(22)が5000メートルに出場。長距離種目で日本代表が最も多いチームになった。現場の指揮を、宗猛総監督から昨年引き継いだ西政幸監督は「今季はしっかりと結果を出し、積み上げてきている。チーム一丸となって日本一を狙う」と静かな闘志を見せる。

 ニューイヤー駅伝では1990年代に6連覇を含む9回の優勝と「絶対王者」を誇ったが1999年以降は栄冠から遠ざかっている。近年は上位チームのほとんどがアフリカ人選手を採用し、純国産チームにこだわってきた旭化成は、インターナショナル区間の2区で大差を付けられるようになった。

 しかし今季は、村山紘が11月末の八王子ロングディスタンス1万メートルで27分29秒69の日本新をマーク。僅差の2位の鎧坂も従来の日本記録を上回る27分29秒74でゴールを駆け抜けた。そのレースで2人は複数のアフリカ人選手にも先着。ニューイヤー駅伝の2区には1万メートル26分台の外国選手も出場するが、村山紘と鎧坂のいずれかが走れば区間賞から20~30秒以内には抑えることができる。

 1区の候補は村山紘に加え、九州実業団駅伝1区区間賞の茂木圭次郎(20)の可能性もある。茂木は拓大一高(東京)から大学に進学せず旭化成に入社。2年目の今季は全日本実業団選手権5000メートルで日本人2位になるなど将来を期待される選手だ。また2年連続区間賞の3区に回る可能性もある鎧坂は入社後、駅伝では一度も日本人選手に負けたことがない。2区で多少のビハインドがあっても、3区まででトップグループを視界にとらえるだろう。

 最長区間の4区と、向かい風になる5区を、村山謙と大六野秀畝(23)が分担しそうだ。村山謙は世界陸上後にマラソン練習を始めた。40キロ走などの練習が高いレベルのタイムで出来、2月の東京マラソンへの出場を決めている。東京マラソンに向けて「出るからにはリオ五輪代表を狙って走る」と意気込むが、その前に走るニューイヤー駅伝でも十分に快走が期待できる。また今春明大を卒業したばかりの新人ながら八王子ロングディスタンス1万メートルで27分46秒55をマークした大六野の評価も高い。昨年の全日本大学駅伝では最長8区(19・7キロ)で区間賞を取るなど、もともとスタミナ型だったが、今季はトラックの記録もトップレベルに伸ばしてきた。大六野が5区で快走すれば、栄冠はさらにに近づく。

 今月6日の福岡国際マラソンでは、キャプテンの佐々木悟(30)が日本人トップとなりリオ五輪代表候補に躍り出た。「チームに強力な新人が入ってきたので、マラソンで存在感を出さないと」という危機感が、良い方向に働いた。ロードに強い選手で向かい風が強くなる5区以降に登場する可能性も十分にある。「チーム全体が活気づいている。そこに(自分も)少しは勢いを与えられたかな」と佐々木。

 役者はそろった。16大会優勝から遠ざかり“勝ち方”を知らない点が懸念材料だった旭化成だが、今季の圧倒的な実績で一気に頂点に返り咲こうとしている。