8メートル31。4・7メートルの追い風参考記録ながら、慶大1年の酒井由吾(18)が驚きの大ジャンプで優勝した。

 全体的に記録が好調な条件下だったが、距離だけなら、日大の森長正樹コーチ(46)が持つ日本記録8メートル25を上回る。酒井は「自分の中ではそんなに跳んでいる感覚がなかった。自分の持っている100%を出せればと思っていた」と話した。

 追う展開になり、スイッチが入った。4回目に8メートル22(追い風2・8メートル)をマーク。しかし、直後に日大2年・橋岡優輝(19)が8メートル30(同3・4メートル)を出し、逆転された。大歓声が沸く会場の中で「逆転されるのが好きなので、チャンスができた」。前向きに捉え、気持ちを高ぶらせた。5回目。地面の反発を意識しながら助走に入り跳躍すると、記録的なジャンプが誕生した。自己ベストは7メートル68も、練習では8メートル以上のジャンプを決めていたという。実戦でも記録を伸ばし「メンタル面が成長したと思う」とうなずいた。

 男子走り幅跳びの日本勢は、04年アテネ大会以来、五輪の出場が途絶えているが、若い世代が高いレベルで競い合っている。森長コーチは「橋岡だけに注目されていたのが、酒井君(東洋大3年の)津波君と出てきた。追い風参考でも記録を出せば、自信が付く」。早く日本記録が更新されることを望んだ。

 昨年の高校総体も制している酒井の夢は大きい。20年東京オリンピックは「8メートル50以上を跳んで、メダル獲得が目標」と話す。ただ同時に足元も見つめる。今回は追い風2・0メートルを超える参考記録だったため「まずは公認記録で8メートル10を跳び、そこから結果をどう残していくか」と言う。陸上界は男子短距離だけでなく、走り幅跳びも盛り上がりを見せそうな予兆がある。